ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

「PAC‐MAN×スカイガーデン パックマンの博物館」に行ってきた

pacman.com


年末年始にかけて計画していた札幌旅行が当日飛行機が飛ばなかった影響でお流れになったのでクサクサしていたところ友人から誘われ、ちょうど自分でも行くつもりであったので連れ立ってスカイタワーに赴いたのが先々週。


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はるばる来たぜ横浜


展示物自体はそこまで多くもなく、日中に行ったのでDJブースも動いておらず……と、さらっと流す分には1時間足らずで回れてしまう軽いイベントだった。
ゲームの展示でいうと海外版パックランドがプレイ可能な状態で展示されており、これは基板で遊んだことがなかったので収穫だった。ちなみに右ボタンの調子が悪く、奥まで押し込むと左ボタンがチャタって反応してしまうようなので、右押してるのに全然進まねえな~と思ったらちょい押しにしてみてください。


あとはNGのごく一部やオールドナムコタイトルの販促イラストの迫力ある原画がありつつ、それでもそんなに分量があるわけでもなく……
つまりスッと入ってサッと出てこれるイベントのはずだったのだが、出口前のテーブルに無造作に置かれた企画書・最終仕様書のコーナー。これがいけなかった。
本当の開発資料を自分の手で行ったり戻ったりしながら「読める」機会などそうは無い。それがオールドナムコのタイトルのものとなればなおさらの話で、一緒に行った友人とこのコーナーだけで2時間ほど粘ってしまった。土曜日なのにそんなに人もいなかったしいいかなって……


そのタイトルをそれなりに遊んだ経験があることが前提になると思うが、内容は本当に興味深かったので、こういうのが好きな人にはこのためだけに行っても損はしないと思う。
表記が「最終仕様書」となっているものがほとんどだったが、実際のゲームと比べてみると差異の大きなゲームもあり、コーディングしている間に「やっぱりこうしよう」と口頭なりプログラマの手腕なりで書面に残さず変えていった箇所が多いのだろう。


どのタイトルも見所が多いが、圧巻だったのはドラゴンバスター。企画書と仕様書が二種類ずつ(それぞれ前期と後期のもの)存在して合計100ページにもなろうかという超大作であった。ファミ通に掲載されていた数ページは本当にごく一部なんですよ。
一部で有名な仮タイトルが『ドラゴンクエスト』であった時代の企画書のほか、マップ画面はもっとギミックがたくさんあったこと、操作系が「8方向レバー+攻撃と魔法の2ボタン」「4方向レバー+攻撃とジャンプの2ボタン(魔法は攻撃ボタン溜め撃ち)」と版を重ねて変遷し、最終仕様の「4方向レバー+攻撃と魔法の2ボタン」という仕様が仕様書に残って"いない"ことなど見所満載。
同行した友人とほへーっと声をあげながら延々読み込んでしまった。
最初の企画書に「V14の基板を流用して採算性を上げる」というような内容が書いてあり、V14とはマッピーのことなのでここから『ドラゴンバスター』と『ドルアーガの塔』に分岐したのかなと思った。企画書の企画意図部分にも「コンピュータRPGを意識」「記憶メディアを使用した進捗状況の保存」という仕組みを見据えた旨が記載されており『イシターの復活』に繋がるところもあるのかもしれない。



もう一つボリューミーだったのがマッピーの仕様書。
これも50ページだか60ページだかの物量があり、これとドラゴンバスターの仕様書は同じテーブルに置いてあるのでこのテーブルが強敵です。今から行く人は気を付けましょう。
他のタイトルと違ってキャラクターや世界観の説明に結構な尺がとられているのが目を引くが、もちろんゲームの仕様書としての体も整っており、ゲーム中の全16マップの敵配置が紙の時点で全部完成しているのもびっくりした。当時は動作確認するのも手間が多かったはずなので、紙の時点で可能な限り詰めておくというのは理屈としては理解できるのだが、敵配置なんてそれこそ動かしながら決めるのだろうと思っていたので……
他にも敵の思考ルーチンなどは図での説明も多いのだが、大半の図が手書きなので資料作成時の苦労がしのばれる。ニャームコとかマッピーとか図でたくさん出てくるのに全部手書きなんですよ。
変わったところでは「自機がネズミのサイドビューアクション」というネタが被ったのを気にしたようで、マッピーの前年に出た『ファニーマウス』のゲーム内容をまとめた資料がある。要は「ゲーム内容は別物だからマッピーも出してオッケー」とする資料なのだが、当時の開発スタッフがファニーマウスを遊んで「どのようなゲームか」「ゲームの肝は何か」「マッピーとの類似性は」と説明していて非常に興味深い。マッピーと同年に『マウサー』というゲームも存在し、こちらも存在については把握していたものの仕様書作成当時は発売前だったからかゲーム内容の情報がなく、発売後に調査予定となっていた(代わりにマウサーの販促パンフが掲載されていた)。

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圧巻の分厚さ。精読していくと時間が飛ぶよ。


他にも「ゲームルールが順序通りにきちんと書いてあるのに全然わからないフォゾン」「囲み方のテクニックがすでにあらかた考案されているリブルラブル」などゲームを知ってると深みが増す仕様書が8タイトル分ほど置いてある。残りは
パックマン
ラリーX
ギャラクシアン
ゼビウス
だったと思う。


物品展示を期待すると肩透かしを食う可能性が高いが、仕様書コーナーはそれを補って余りある貴重な内容となっている。
会期は2月いっぱいなのでこの手の開発資料を読んでみたい人は行ってみると良いだろう。