全エンディング。リュックはそれなり。
しっかりと海腹川背であり、それでいて若干痒いところに手の届かない完全新作。
「さよなら海腹川背」とは、アガツマ・エンタテインメント発売、スタジオ最前線開発のアクションゲームである。プレイヤーは主人公の海腹川背さんを操り、ゴムひものついたルアー一本でゴールドアを目指していく。
■ラバーリングアクションゲーム
ゲーム内容は極めてオーソドックスな一撃死系ジャンプアクションなのだが、海腹川背シリーズ最大のアイデンティティとなっているのが、主人公の海腹川背さん唯一の武器であるゴムひもルアーだ。このルアーは8方向に一直線に投げることができ、最大距離まで伸びたらまた一直線に戻ってくる。
ルアーは特定の地形以外のあらゆる箇所に引っ掛けることができ、当然そのままぶら下がったりできる。この時、ルアーと海腹川背さんを知内でいるのがロープではなくゴムというのがポイントで、ただの振り子運動ではなくビヨンビヨンとゴムの張力の動きが加わり、制御が難しい代わりにかなりの運動エネルギーを得ることができる。
あそれびよんびよん |
天井からぶら下がって、縦あるいは横方向への運動エネルギーを作り、ルアーをリリースして一気に移動するのがこのゲームの最大のポイントだ。
■マイルド化
難易度的には全体的に軟化した。ステージはゴールを目指すだけならそれほど苦労はしないし、川背さんの動きも全体的にゆったり目のテンポになった。ゴムのパラメータも前作ほどピーキーではなく、壁を縦に登る動きはかなりやりやすくなったし、振り子運動も作りやすくなっているように感じる。
それを埋め合わせるかのようにステージ中に「リュック」が置いてあり、リュックを取得したままゴールに到達することで、ギャラリーモードの様々なおまけ要素が解禁されるようになっている。
リュックの配置自体はなかなかにシビアであり、リュック取得後に死んでしまうと、もう一度リュックをとるところからやり直しなのでここは歯ごたえがある。肝心の解禁要素が正直弱いので、おまけよりはステージ完全制覇の自己満足のためのギミックという意味合いが強い。
■初心者への配慮
新キャラクターが選べるようになって、小学生二人を使用した際に利用できる「チェックポイント」はゲーム全体の難易度を下げつつも「1度しか利用できない*1」「復活時も経過タイムはそのまま」と、緊張感と不使用を推奨するうまい落とし所を実現できていて、これはよくできた初心者向けシステムだと思う。
序盤ステージはクリアまでのデモプレイが見られ、オプションで方向キーの入力も視覚化できるので、こういった点ではかなり気の利いた導線を引くことができている。
■端々に見える雑な仕事
ゲーム内容はきちんと海腹川背シリーズしているのだが、それ以外のグラフィックだったりシステムだったり、UIといったところはどうにも手が回りきっていないような印象を受ける。
特にグラフィック周りがかなり苦しく、無理にポリゴンにするくらいなら前作の「旬完全版」と同じように2D路線で良かったのではないかと思う。それでいてfpsは通常30fpsと前作より劣化しており、立体視オンで特定のステージをプレイすると処理落ちがさらに加速する。
よく分かるのがこうした夜のステージで、3Dボリュームを上げていると常時処理落ちする。これ以外にも動く床など可動物が多いステージなどは処理が苦しく、足場が動いた瞬間フレームがガクッと飛んだりして落ち着かない。 |
システム的な面でも、例えばこのゲームは前作までと違って「1面ずつ攻略していくチャート方式」となっていて、1面から順繰りに通しでクリアしていくステージクリア方式ではなくなった*2。それはいいのだが、下画面にそのチャートが常時表示されているというのは意味がなさすぎるのではないだろうか。「旬完全版」ではステージのマップが表示されていた箇所なので、これをやめた理由がちょっとわからない。
また、ゴール分岐の存在するステージが基本ノーヒントで、チャート的に分岐しそうなステージを隅から隅まで回らないと分岐ゴールが見えないというのはスパルタすぎたと思う。せめてステージに分岐があるかどうかだけでも出してくれれば。
死んだ時のやり直しが常にステージ選択からなのも正直どうかと思う。余程のことが無い限り、どうせそのステージをやり直すのだから、デフォルトでリトライするという仕様で良かった。
ゲームプレイ面では、新システムの「タイムストップ」は正直使いどころがわからない。開発者インタビューによると「3DSの十字キーがナナメ入力しづらいので補助機能としていれた」とのことなのだが、そもそもキーコンフィグに右上・左上それぞれにルアーを投げるボタンが存在するのであまり意味が無い。タイムストップボタンを押してから操作するよりLRボタンに斜めルアーをアサインしたほうが楽だし速い。
タイムストップ中。この間に方向キーとボタンを押しっぱなしにすれば、その方向にルアーが出る……のだが…… |
難易度はマイルドと先ほど書いたが、どういうわけかボス戦だけは異常に難しい。今回は逃げまわるだけではなく、ステージギミックを利用してボスを倒すという謎解き要素が追加されたのだが、最初のボス以外は原則ノーヒントで、たとえダメージの与え方がわかったとしても、今度は異常に厳しい操作を要求される。さらにギミックの動き方が気まぐれで、ようやく行けそうと思ったらさっきまで降って来なかったカエルが降ってきて0ミス死亡も起こりうる。私個人で言うと強化カニが辛くて、あまりの難易度に嫌気が差して数日間このゲームを封印してしまったほど。
こいつだ。こいつがいけないんだ。 |
■総評
悪いゲームでは無いが、マイナス点が良点を覆い隠してしまっている。ゲームプレイのコア部分は間違いなく海腹川背シリーズで、その部分だけに注力すれば間違い無く面白い。だが色々と痒い部分が多すぎて、ひとりでに評価が下がってしまう惜しいタイトル。このタイトルを遊んで気に入ったのであれば、ひと通り遊んだ後「旬完全版」に手を出すと、色々と進化が感じられて幸せかもしれない。
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