読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

ドラゴンズクラウン 感想

VITA ゲーム感想 PS3

Vita版をハードまで。
つくづく「ああヴァニラウェアのゲームだなあ」という感想しか出てこない。ヴァニラウェアらしさがあふれるほどに詰まった超一級の動く絵本。

※本作に対するパッチによる仕様改善が始まっているが、本稿は「発売時点のバージョン」をプレイしての感想である旨をご留意頂きたい。


 ドラゴンズクラウンは、ヴァニラウェアの開発したアクションRPGだ。6つ用意されたクラスの中から1つを選び、クラスごとに攻撃方法や立ち回りの基本が異なる。キャラクターには装備とレベルの概念があり、プレイヤーはステージを繰り返し攻略することで、装備を強化し、レベルを上げて、能力を成長させてゆく。
 特徴はアクションパートに「ベルトスクロール型」を採用している事で、かつてはカプコンが「ファイナルファイト」をはじめとした傑作を次々と輩出、アーケードゲームで隆盛を誇り、そして廃れていったジャンルである。
 本作を開発したヴァニラウェアの代表にして本作のディレクターである神谷盛治氏も、かつてカプコンで「Dungeons & Dragons TOWER OF DOOM」という、やはりベルトスクロール型アクションの開発にかかわったという経歴を持っており、そんな神谷氏が手掛けるファンタジーアクションの新作ということで、その内容とともに私は大変注目していた。


■美麗なファンタジー
 何をおいても、そのグラフィックを抜きに本作を語る事は出来ない。神谷盛治氏が直々に描くファンタジーそのままの世界がここにある。精密に描かれたキャラクターが、幻想的な背景の前でベルトスクロールアクションの様式に従いグリグリ戦う。これこそが本作の最大のセールスポイントだ。
 静止画のクオリティは間違いなく当代随一の高みに至っており、キャラクターの書き込みにも背景の書込みにも、魔法エフェクトの1コマに至るまで手抜きの見られないプロの仕事。こと2Dグラフィックと言う面において、今後これに追随するクオリティをもつタイトルが出てくるかどうか怪しいレベル。

f:id:UnFreeMan:20130729232557j:plain:w300:leftこの静止画がすごい!

 また、本作はテーブルトークRPGとしての世界観を強く意識しているようで、ゲームの進行演出は基本的にそれに準じた体裁をとっている。シナリオ目的の解説や登場人物の会話などはすべてゲームマスターの語りによって行われ、故・谷口節氏の落ち着いたナレーションボイスも、雰囲気を盛り上げる事に一役買っている。
 ダンジョンズ&ドラゴンズを強く意識しているであろう王道のファンタジー世界を描いたグラフィックと、ゲームマスターによる進行演出で、絵本や小説の挿絵がそのまま動き、物語を直接紡いでいるような、そんな世界観を見事に構築している。


ベルトスクロールアクションとしてのドラクラ
 肝心のベルトスクロールアクションとしてのドラゴンズクラウンであるが、どうもしっくりこない。まず自キャラが見えない。緻密に書き込んだグラフィックや魔法エフェクトや画面効果が豪華過ぎるあまり、キャラクターがその中に埋没してしまうのだ。薄暗い色遣いの背景が、暗い場所に入るときちんと自キャラに影が落ちると言う演出が、ウィザードの放つ爆炎が、ソーサレスの放つ七色の電撃が、プレイヤーキャラを視認性ごと消し飛ばしてしまう。

f:id:UnFreeMan:20130729231720j:plain:w300:left宝箱を開けるたびにドロップ品のグレードがピカー! グレードが低級品のDでもEでもピカー! ちなみに戦闘中だろうが何だろうが出る。

 これに加えて多人数プレイ時はさらに事情が深刻になる。オンライン含めた多人数プレイやAIキャラ投入時には同クラスのキャラでも同時プレイ可能なのだが、その際の色分けがあまり大胆に行われておらず、似た色合いのカラーバリエーションが多いので「どっちが自分のキャラか」分からない事態が発生する。自キャラにのみカラーマーカーがつく等の対策自体は取られているのだが、マーカーそのものが割と地味という欠点もあって見づらさはかえって増幅されているように感じる。

f:id:UnFreeMan:20130727235406j:plain:w300:leftファイターが1組かぶっただけでこれ。俺がお前でお前が俺で。盾とか装備が違うんですが、これが動くと薄暗くさ等の要素がからみ合ってほんとわからない。

 ベルトスクロールアクションなのに「横軸の攻防」は軽視傾向にある。例えば「上に移動しながら攻撃」「下に移動しながら攻撃」という操作に、それぞれ対空攻撃・スライディングといった特殊行動が割り当てられてしまっているので、軸移動しつつ攻撃という行動が非常にやりづらい。しかもこの操作はアサインし直せない。同じような操作を持っていた「D&D SHADOW OVER MYSTARA」の対空必殺やスライディングはコマンド技だったが、その理由がまさにこれ。攻撃アクションが攻撃そのものを阻害している。
 というより、本作のバトルは全体的に3Dバトルアクションのお作法なのだ。中盤を過ぎると敵キャラのダウン耐性が底上げされて常時スーパーアーマーになる点、出かかり無敵の回避行動がボタン一発で出せる点、空中コンボに制限が無い点など、およそベルトスクロールアクションらしからぬ要素がそこかしこに用意されている。特にボス戦では斬って斬って回避、斬って斬って回避と、まさに3Dバトルアクション独特の大味さを体験する事が出来る。


■クリックゲーの是非
 アクションステージで唐突にクリックゲーを強要されるのも疑問。本作ではゲーム中にしばしば「右スティックで指カーソルを動かして特定の箇所をクリック」という操作を行う必要がある。閉じている扉を開けたり、宝箱を開けたり、クエストのクリアフラグになっていたりと出現場所は多岐にわたるが、そもそもこの操作を取り入れた理由がわからない。普通に扉や宝箱の前に立ってボタンで何がいけなかったのか。
 Vita版では右スティックの代わりに画面タッチでクリック操作を代替できるため、右スティックでやらされるよりは相当マシではあるのだが……

f:id:UnFreeMan:20130729232814j:plain:w300:left宝箱のあるシーンでクリックゲーをサボって敵を全滅してから宝箱を開けようとすると、この通りどこからともなく現れた別の盗賊が宝箱を開けて去ってゆく。忙しい戦闘中に画面をタッチしろというのも微妙。

 また、カーソルクリック時に扉や宝箱の開閉を行うロニというキャラに意味が全くないのも気になる。ロニが何かアクション部分に寄与するという要素は一切なく、ただ扉や宝箱をロニに開けさせるため、プレイヤーの足止めをするためだけに存在する要素になり下がってしまっている。宝箱にはお約束としてトラップつきのものもあるのだが、ロニに任せている間にプレイヤーは離れてしまってよく、ロニ自身はダメージ演出こそあれど無敵キャラなので、トラップを受けても何も問題無い。トラップというギミックがロニのせいで丸ごと死んでいる。


■厳しい仕様のRPG部分
 本作はRPGの要素を持ち合わせているので、当然キャラクターのレベルを成長させていく必要があるし、ゲーム側もそのように設計されている。アクションステージでの行動に応じて経験値が手に入り、宝箱を開ければ装備品が手に入る。経験値が溜まればレベルが上がり、装備品の装備制限が解除され、主人公の火力は徐々に上がってゆく。
 これを繰り返して能力を底上げし、ラスボス撃破を目指すと言うのが本作の主なゲームフローなのだが、そこかしこのシステムやUI設計が粗すぎて、アクション以外の部分に無駄に時間のかかるゲームになってしまっている。ヴァニラウェアの前作「グランナイツヒストリー」もそうだったのだが、本作も「繰り返し使用するUIやシステムの出来が悪い」という欠点を引き継いでしまった。
 仲間を増やすために寺院で遺骨を復活させる際、復活対象が複数指定できず、遺骨の廃棄も単品か全部一括かでしかできない、消耗品アイテム購入時の在庫システムがわかりづらいうえに在庫の確認がしづらい、ステージ連戦時に装備の耐久力が確認できない等、腰を据えてプレイすればするほど細かい不満が積もり積もってゆく仕様になっている。
 ただ、この文章を書いている間に修正パッチが配信され、不満の一つとして挙げていた「バッグの中身を一括修理できない」という問題が機能追加という形で解消された。少なくとも現在不便に感じている点は今後改善される可能性があることは強調しておきたい。


 装備以外にプレイヤーの個性を立たせる要素としてはスキルシステムが存在するが、これも今一つ。レベルアップやクエスト報酬で得られるスキルポイントを消費して新しいアクションを覚えることができ、その取捨選択で同じクラスでもプレイヤーごとに個性が出るようにはしてあるのだが、必須スキルと死にスキルが誰の目にも明らかなレベルで分かれているため個性が出しづらい。スキルの振り直しにも厳しい制限があり、別キャラを育てる場合はストーリーをまたはじめからやり直すことになるため、スキル構成を冒険するためのハードルが非常に高い。

f:id:UnFreeMan:20130726021600j:plain:w300:leftせめてもっと気軽に振り直せれば。

ヴァニラウェアのゲーム
 ノーマル難易度クリアまで、あるいはノーマル中盤までは、その卓越した美術見たさに一気に遊ばせる魅力を持ったゲームなのは確か。しかし肝心のアクションゲーム部分に奥行きが今ひとつ感じられない。短めのステージを何周もするというゲームデザインも相まって、プレイを続けていくと加速度的にその魅力が色あせていくように感じられた。一周クリア後に出現する追加ダンジョンも基本的に既存ステージの切り張りで新規性は無い。


 結局のところ、本作は絵だけ綺麗な凡作の範疇を抜け出せておらず、それはつまり「いつものヴァニラウェアのゲーム」であることに他ならない。アクションRPGとして遊ぶにはあまりにもプレイ内容に奥行きが無さ過ぎる。かといってベルトスクロールアクションとしての内容も、かつてのD&Dシリーズの完成度などには遥かに及ばない。もちろん本作の最大の売りは美麗なグラフィックと美術設計であり、それを観賞させるための仕組みはきっちりと整備されている。しかし物語が一周して新しいグラフィックが提示されなくなった時、その時がこのゲームの寿命である。


 最後の希望はオンラインだ。幸い、本作にはストーリーモードを共同で進めるモードの他に、コロシアムも用意されている。どんなゲームも他人と遊べば面白くなるのは間違いなく、オンラインプレイは本作の寿命を幾ばくか長持ちさせてくれるだろう。本作のオンラインプレイに意思疎通の手段は一切ないが、そのキャラを誰かが動かしているのが明らかな状況というものは良い物だ。本作の馬鹿すぎるAIに比べれば、見知らぬ誰かの多少の狼藉があろうとも、なんの問題にもならないだろう。

ドラゴンズクラウン

ドラゴンズクラウン

ドラゴンズクラウン

ドラゴンズクラウン