ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

アホ毛ちゃんばら 感想

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隠しモード「天国への階段」まで含めて一通りクリア。

パンチアウト


■概要

アホ毛ちゃんばら」は、レトロゲーム移植に定評のある株式会社エムツー(以下、M2)初のオリジナルタイトルである。

M2はこれまでにも「グラディウスリバース*1」「SYSTEM16ファンタジーゾーン2*2」など、既存シリーズの派生タイトルの制作を手掛ける事はあったが、M2自身での完全オリジナルタイトルの発売は今回が初めてとなる。


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ゲーム内容は、画面タッチと下方フリック入力のみを使用する対面型の対戦ゲームで、システムでいえば任天堂の「パンチアウト!!」に近い。

画面タッチで敵を攻撃、下方フリックでバックステップ回避。攻撃や回避のたびにスタミナゲージを消費し、スタミナがゼロになると一定時間スタンしてしまう。このゲージのやりくりをするのがゲームの肝。

スタミナゲージは何もしないでいれば回復するし、敵の攻撃を回避できれば、回避アクションに支払ったスタミナゲージよりも多くのスタミナゲージが還元される。このゲームには「溜め攻撃」があり、溜めた時間に応じてそれ相応にスタミナも減っていくが、敵に当てればダメージに応じたスタミナゲージが返ってくる。


■シンプル

とまあ、見事なまでにパンチアウトシステムをなぞっているので、基本的なゲーム進行はパンチアウトに準ずる事になる。敵の攻撃をかわす→かわすと膨大な隙が出来る→殴る。以下繰り返し。溜め撃ちのスパァ―――ンという音には爽快感があるし、相手が雑魚キャラであれば体力ゲージも景気良く減っていく。スタミナも回復する。極めてシンプルな爽快感こそが、このゲームの最大の売りではないかと思う。

もっとも、その爽快感は長続きしない。いくらなんでもゲームプレイに変化が無さ過ぎるからだ。攻略と言う要素に乏しく、ラスボスを除けば、ステージが進んでもやることに全く変わりが無い。せいぜいボスの攻撃エフェクトが変化する程度のもので、あとは攻撃力と防御力のパラメータ、それから外見のパーツが適当にシャッフルされた敵キャラと延々対戦していくだけ。「多種多様なアホ毛が存在」というのはあくまで外見上と図鑑の都合の話であって、その要素がゲームプレイに寄与するところは殆どない。「攻撃方法や回避のタイミングにバリエーションがある」というような要素も無いので、そもそもゲームルール自体が少し変化するラスボスまでは、敵が硬くなった1面が延々続くと思ってもらえれば良い。シンプルが過ぎて単調に転じるまでの賞味期限が非常に短く感じる。


雑魚戦には存在しない制限時間が、ボス戦になると唐突に設定されるのも微妙。このゲームの敵はあまり積極性が無いので、ゲーム中にお見合いしている時間が結構長い。相手が手を出してこないという事は、こちらの攻撃を当てる下準備である「回避」ができず、自然と戦闘時間が長くなる。結果、タイムオーバーが多くなる。タイムオーバーになると格闘ゲームよろしく「体力ゲージの残り具合」で判定が行われるのだが、そうなると雑魚戦という要素が存在するプレイヤーが不利になる。

とくにボスが硬く、スタン時間も短くなる後半面になると、「ボスが攻撃してきてくれないのでボス戦の被弾ゼロなのに負け」ということが起こりうる。

こちらから攻撃をしたくとも、回避アクションは当然敵も行ってくるし、とくに超反応を誤魔化したりするような行動も取らないので、ゲーム内の回避判定おみくじでハズレを引いた場合は、こちらが攻撃する瞬間に神反応で回避行動をとる。こちらが回避なしで敵に攻撃を当てるには、こちらが攻撃するたびにおみくじで「回避されない」というアタリを引く必要があるのだ。回避されるとスタミナは減るし隙はできるしで良い事なんて一つも無いので、確実に攻撃を当てるためには敵に攻撃してきてもらって、それを回避する立ち回りをしたい。それだったら受け身の姿勢で余計な手は出さずに相手の行動を待ったほうがよく、結果として戦闘は長引く。つまり制限時間と言うシステムとゲーム内容がかみ合っていないのだ。

同じ理由で、クリアタイムが保存される仕様にも正直意味が無い。現状では腕前ではなく、おみくじで攻撃命中というアタリを引くリアルラックを競っているに過ぎない。


■細かいアレコレ
その他気になるところで言うと、ゲーム外のシステムのお粗末さがかなり目につく。特にひどいのが課金アイテム購入画面のUIで、作った人に自分の仕事を省みてほしいくらいわかりづらい。画面構成的に「最初はリアルマネー課金ではなく、ゲーム内通貨でバラで買える予定だった」のではないかと邪推したくなる。

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問題のアイテム購入画面。このうち購入できるのは上部のアイテム装備枠と、左下のメニューから選ぶ2つのセットアイテムのみ。コインアイコンがリアルマネーではなくゲーム内通過を想起させそうな作為的デザインである点もイカす。





倒した敵のアホ毛についてのコメントが見られる「アホ毛学習帳」という図鑑もだめで、説明文がページ単位で一括表示されず、ひどい項目だと句読点ごとにページ送りのためのタッチ操作をさせられる。ゲーム本編のデモシーンにこんな要素は無いので、なぜここにだけ5行のテキストのために3回も4回もタッチさせるような仕組みを盛り込んだのか意図が読めない。


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例えば上の2枚は図鑑のはじめと終わりのスクリーンショットだが、文章を全て表示するまでに4回タッチでページ送りしている。


ボスを倒した後のアホ毛を引っこ抜くイベントの操作難易度も疑問。操作が理解できずに20分詰まった個人的事情が多分にあるが。


■総評
このゲームは1面だけ無料で遊ぶことができ、2面以降をプレイするのに250円の課金が必要となるゲームなのだが、この面に置いては非常にフェアなゲームだと思う。1面にこのゲームの要素はすべて入っていて、ラスボス以外は概ね全て1面の焼き増しだ。2面以降のスキンと、図鑑モードの代金としてあるのが250円というお値段なのだろう。
ゲームの移植・アレンジのプロ集団としてのM2に対する信頼はまったく揺らがないが、このゲームは今後M2がオリジナルを生み出して行く上での習作なのだと結論付けるよりほかない。ウチがその習作に支払った250円は、M2の新たな展開に対する御祝儀だとでも思ってくれれば良い。

*1:WiiWare

*2:PS2版ファンタジーゾーンコンプリートコレクション収録