「おい、炎のコマ 炎のコマはどこだ」
はい、お嬢様。
「随分間があいたわね?」
申し訳ございません。私目少々お暇をいただき実家に帰省しておりましたので。
ところで、わたしの名前は
「あなたは口を挟まないでコマ」
コマ?
「今日もVectrexよ、コマ」
かしこまりましたお嬢様。本当は別のゲームを紹介する予定だったのですが、
次回紹介するはずだったゲームが届いてしまったのでこちらを遊んでいただきましょう。
「これまでと毛色が違うわね?」
左様でございます。
今回ご紹介するこちらは2003年に発売された同人カートリッジでございますから。
「……2003年?」
はい。Vectrexの同人ゲーム界隈は未だに続いておりまして、
古くはゾルゲ市蔵氏の著書「謎のゲーム魔境」にその一部が紹介されておりましたが
その命脈は今でもつづいているというわけでございます。
「オーバレイはないのね?」
このゲームに関してはオーバレイの使用は想定されていないようですね。
今回に関してはあまりオーバレイの必要性はないもありませんし。それでは起動してみましょうか。
このカートリッジには「Protector」というゲームと「YASI」というゲームが収録されておりますので、
まずはこちらの画面からプレイするゲームをご選択ください。
個人的にですが、クレジットも必見です。
「そう言うなら、見てみるわね」
「確かに凄い表現をしているわね。写真だと全然わからないのだけど」
動いている画面を見せられないのが本当に残念なのですが、この画面はちょっと凄い表現をしています。
CD状に描画されたベクタが変形しながらくるくる回るのです。モニタの動作音も激しくなるので若干不安になりますが。
「じゃあ、まずはProtectorからプレイしてみるわ」
「この画面も魅せてくれるわね。タイトルが綺麗に光っているわ」
オーバレイ無しの単色画面というハンデを補って余りあるタイトル画面だと思います。
本当に動いている画面を見せられないのは残念で残念で。
「見栄えは大事よね」
はい、お嬢様。
まずは操作方法ですが、デフォルトではレバーで上下移動、
1ボタンで左右反転、2ボタンで前進、3ボタンで攻撃、4ボタンでボムとなっております。
画面上部のレーダーを参考に、迫り来る敵から画面下部の人類を守ってください。
「我が家は人類と敵対していたのではなくて?」
こちらはゲームですので。そこは割りきってください。
「割り切りは大事よね」
こちらがマップです。原作では色の違いで敵味方や自機を区別しておりましたが、
なにぶん単色のVectrexですので、光の強弱で敵味方を表現しています。
これも写真だと判りづらいのですが、実際の画面ではこれがなかなかうまく表現されておりますね。
「原作?」
ああ、説明が漏れておりました。
そもそもこの「Protector」というゲームは、1980年に米国Williams社が発売した
「Defender」というゲームの移植作なのですよ。タイトルもそれに関連した単語にかけているわけですね。
原作と見比べてみればおわかりになるかと思いますが、ゲーム性に関しては極めて高いレベルで再現しております。
タイトル画面がピカピカ光るのも原作のタイトルが原色でどぎつく光っていたからでしょうね。
「じゃあ"YASI"の方もそうなの?」
起動してみればわかりますが、Defenderよりは一般的なタイトルの移植でございます。
はっきり言って驚異の再現度と言わざるを得ません。動作速度も完璧です。
これでカラーセロハンでも画面に貼れば
原作と偽って駄菓子屋で10円取れるレベルでしょう。
もっとも、内部的には相当な無茶をしているようで、
このようにベクターの調整画面が存在したり、フリッカ(画面の点滅)も激しく、
画面の動作音もかなり大きくなるので長時間のプレイは内心結構ドキドキしますね。
「YASIの方はともかく、Protectorもなかなか面白いわ。
移動も速いし攻撃もなかなか連射が効くし演出も派手ね。
守るはずの人類も普通に射殺できたり、確かにあなた好みのゲームね」
お褒めにあずかり光栄でございます。
「ところで」
はい。
「DefenderがProtectorというタイトルになるのはなんとなくわかるわ。
でもYASIというのは何なの?」
はい、公式サイトによると
「Yet Another Space Invaders」略してYASIだとか。
「どうでもよかったわね」
左様でございますね。