3日使ってどうにもならなかったので。
長くなりそうなので先にまとめを提示しておくと
①REGZA(50Z20X)とYAS-209の組み合わせでゲームに使用するサラウンド環境を構築しようと思った
②50Z20X側の表示モードをゲームモード(低遅延モード)にすると何をどうやっても音声出力が遅れることが分かった
③ゲームモード以外にすると画面の遅延と音声の遅延がつり合ってちょうどよくなるがゲームができる状態ではない
④あきらめた
■前置き
これまで自宅で使用していたサラウンドシステムに対して、私はゲーム機本体から出る光デジタルケーブルを挿すことで対応していた。
PS4およびXboxOne世代に関してはこれで対応できていた(Switchは据え置きモードで使用する機会があまりないので気にしていなかった)のだが、Xbox SeriesX/S、およびPS5については本体の光端子が排除されてしまったのでこれが使えなくなってしまったのだ。
そもそもサラウンドシステム側のHDMIパススルーがHDMI1.4までで、4k出力に対応できない仕様になっていたので、これを機にとサウンドバーの新調を試みた。一瞬だけAVアンプ+スピーカー調達という手段も考えたが想定予算を計算してこの考えはなかったことにした。
予算的に最終的に候補に残ったのが
と
ソニー サウンドバー HT-X8500 デュアルサブウーファー内蔵 4K HDR HDMI付属 Dolby Atmos DTS:X (オンラインライブやゲームにもお勧め)Bluetooth 対応
- 発売日: 2019/04/18
- メディア: エレクトロニクス
金額的にはヨドバシなら大差なく、ヨドバシの環境で試聴する分にはどちらも悪くなかったのであとは好みの問題、純粋二択と判断し、サブウーファーが別でついているという点を評価してYAS-209を選択した。
店頭在庫はなかったがたまたま一瞬だけヨドコムで在庫ありになったので購入即決、到着後さっそく自宅のXbox SeriesX(以下XXX)と50Z20Xに接続してみたのだが……
猛烈に音声が遅延するのである
大雑把に計測してみたところ全ての音声が、画面から0.2秒ほど遅延しているのだ。
その状態でいろんなゲームを試してみたものの、正直なところ気持ちが悪くてゲームにならないレベルだった。特にSTGは効果音が画面と全くシンクロしなくなる。
さすがにおかしいと思い、設定面でなんとかしてみようとあれこれ画策してみた……が、ダメだったことの備忘録というのが本稿の趣旨である。
■やったこと
私は最初、下記のように接続していた。
XXX本体→YAS-209→50Z20X
※接続はすべてHDMI2.1対応ケーブル
この状況だとXXX本体側のサウンド設定(PCM・PCM5.1・ビットストリームDTS/ドルビー)にかかわらず、全ての設定で音声の遅延が発生した。
そこで、下記のような接続に変更してみた。
XXX本体→50Z20X→YAS-209
※接続はすべてHDMI2.1対応ケーブル
XXXからYAS-209に直接接続するのではなく、50Z20XからARCを使って音声をYAS-209に送るやり方である。
この状態でXXX本体側の設定サウンド設定をいじってみたところ、ステレオ設定の場合のみ遅延が発生せず、画面と音声が一致した。
ただ「ステレオ音声だけ遅延しない」というのはもともとの50Z20Xの特性である。
サラウンド音声のデコードに時間がかかるのか、ゲームモードかつサラウンド設定という入力方式を50Z20Xが想定していないのかは不明だが、50Z20Xはサラウンド音声ソースを入力すると、外部出力ではなくモニタから音声を出力した場合でも音声出力が遅延する。ただし出力モードがゲームモード以外の設定であれば、画面の遅延と音声の遅延が釣り合うので問題がなくなるというわけだ。
今回の場合はYAS-209は「ステレオ設定だけ遅延しない」という50Z20Xからの音声出力を正常に反映できているわけで、つまりYAS-209に故障があるというわけではないことがわかった。
ちなみに50Z20Xには光デジタル出力もついているため
XXX本体→(HDMIケーブル)→50Z20X→(光ケーブル)→YAS-209
という接続も可能で、こちらも試してみたが結果は全く同じであったことを付記しておく。
ここまで試行して、私の脳裏にはうっすらと
「YAS-209と50Z20Xの組み合わせがいけないのではないか？」
という考えが浮かび始めていた。
XXX本体からの音声はステレオ入力ですら遅延するのに、50Z20Xからの音声はステレオ入力にせよサラウンド入力にせよ50Z20Xの出力したタイミングで出力できているのがその理由である。
そこで当初の接続方法に戻し、50Z20Xの設定をシアターモードに変更して音を出してみた。
XXX本体→YAS-209→50Z20X(シアターモード)
※接続はすべてHDMI2.1対応ケーブル
シアターモードにしたのは単にモニタ遅延が発生するモードだからである、要はゲームモード以外であれば何でもよい。
この場合はXXX本体のサウンド設定にかかわらず、音声と映像はほぼ一致した。こころなしかドルビーデジタル出力の場合のみやや遅延がある気がしたが、プラセボといえる範囲内だと思う。
もちろんモニタがゲームモードではないので今度は操作のほうが遅延すること甚だしく、ゲームで遊べる状態ではない。しかし逆に言えば、ゲーム用途でないのであれば問題なく使える状態でもあるわけだ。
疑惑がさらに深まった私は、まずモニタを接続から外してみた。
XXX本体→YAS-209
※接続はHDMI2.1対応ケーブル
XXX本体をサラウンド設定にしておいてメニュー画面を出し、YAS-209と50Z20XをつなぐHDMIケーブルを外す。
そして画面に見えないメニュー画面を操作してみる。するとどうだろう、サラウンド音声は有効なまま遅延も解消されたのである。
画面は見えていないがXXXコントローラの方向キーの押下音(実は結構やかましい)とメニューカーソルが移動した音がシンクロするのでこれがわかる。逆に言えば50Z20Xと接続すると、ここが全くシンクロしないレベルで遅延するのである。
さらにそのまま、PCモニタであるMDT242WGに接続してみた。すると画面出力は正常に行われ(ただし4kモニタではないのでフルHD解像度になる)、遅延もないサラウンド音声がYAS-209から再生された。
やはりYAS-209と50Z20Xの接続が、YAS-209で遅延が発生するトリガーであるようだ。
■仮説と結論
YAMAHAのサウンドバーはREGZAリンク対象機種となっており、50Z20Xでは接続時に特別な表示が出るようになっている。
これは50Z20X側の仕様ではあるが、おそらくYAS-209側も同様にEDIDか何かでREGZA系モニタとの接続を検知し「REGZA系モニタに最適な音声遅延をかける」というような仕組みが備わっているのではないだろうかという仮設を立てるに至った。50Z20Xに接続しなければ遅延なく音が出るという検証結果がそれを裏付けている。
この後さらにお互いのCEC設定を切ってみたりといろいろ設定を見直してみたが無駄だったので、設定でどうのこうのできる箇所の実装ではなさそうだ。テレビ番組や動画鑑賞と行った範囲内での使用であればこれでも何も問題はないのだが、ゲームモードのような低遅延の画面出力では音声の遅延という形で問題が表面化するのだろう。
以上の検証より、YAS-209+50Z20Xの環境で「サラウンド音声+ビデオゲーム向け低遅延画面」の環境を実現することは現状不可能であるという結論に至った。
YAS-209側の機器側設定は可能な限り検証したが、50Z20X接続時の遅延はどうにもならず、私はYAS-209のドナドナを決意した。購入後4日目のことである。
■できなかったこと
50Z20XとMDT-242WG以外のモニタとの接続は持ってないのでできなかった。おそらくREGZA系機種では同じ結果になると思うが、ビエラやアクオスといった他社のブランドモニタでは試せていないため、その場合は遅延があるともないとも断定できない
■フォロー
YAS-209の音の鳴り方自体は非常に好みだった。音成分の結構な範囲をサブウーファーに頼っている向きはあるが、そのおかげで同価格帯ではひときわ太い音が鳴る。
サウンドバーサラウンド特有の嘘くさい定位感も結構気に入っていた。だからこそどうにか活かせないかと頑張ったのだが……50Z20Xとの組み合わせだとゲームに使えないというのがあまりに致命的だった。
ゲームを目的にしないのであれば、この価格帯ならまっ先に選択肢に入ってくる商品であると今でも思う。ぶっちゃけ半分くらいは光デジタル出力端子をケチったMSとSIEが悪い。
■今後
サラウンド環境の構築自体はあきらめていないのでHT-X8500を試してみるか検討中である。が、今回のような「ゲーム機・モニタ・サウンドバーすべてを接続しないと発現しない仕様」を踏んでしまうと、こういう買い物の腰が重くなるというのも確かだ。店頭での確認が非常に難しくなるからね。
ひとまず半分くらいの値段で変えるサラウンドヘッドホン等でしのぐのも手なのかもしれない。
あ、ゲームモード設定の50Z20XとYAS-209で音が遅延しない設定をご存知の人がいたらぜひ教えていただきたく……あるようなら買い戻すので。
もしくは50Z20XとHT-X8500の組み合わせで遅延が出るかどうかをご存じの方がいれば……
最後に、本稿は2020/11/10時点で私が検証した範囲内での結果を元に執筆している。その後ファーム更新などで本稿とは状況が変わっている可能性もあることはご了承願いたい。
