ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

MGSV:TPPクリア

本当にすごく期待していて、実際に遊んで五時間くらいまでは間違いなく最高傑作で、いやーこれはもう2015年のGOTY決まっちゃったかな~と本気で考えていた。長年私の中のゲリラ戦シューター枠ナンバーワンであったFarCRYがついにその座を明け渡す時が来たかと思うくらいに。
ちょっとこのゲームに対する感情は上下しすぎていてまだ気持ちの整理ができていないのだけれど、本来あるべき、そしてもう二度と見ることはかなわないであろう「本当のMGSV」を渇望する今の気持ちが小島秀夫が最後に残したPHANTOM PAINであるのなら、彼は大変に罪深い傷跡を私の胸に残していったと言える。


たぶんいずれきちんとしたレビューをいつものところに寄稿すると思うのだけれど、Twitterで長々と吐き出すには少々アレなので主にストーリー面について思ったことをとりとめなくここに残しておく。内容は本当に思いついたままです。妄想も多め。あとネタバレは自重しませんのでEP46(実質最終話)を未見の人は注意。



  • 結局メインキャラクターのほぼ全員がヴェノムの正体は知っていたんだよな。ヒューイでさえヴェノムと初めて会った時に自分の知るスネークかどうか違和感を持ったくらい(ただし確証を持つ前に有耶無耶になった)だし、カズはEP46の病院のシーンで「瀕死のビッグボス」とは別に「頭に破片の刺さった瀕死のスタッフ(後のヴェノム)」が一緒に運び込まれたことを知っていたもんな。スカルフェイスは言動からは気付いているともいないともとれそう。
  • ゲーム終盤のヒューイ追放イベント直前あたりからマザーベーススタッフの挨拶に「あなたが何者であっても私にとってのビッグボスはあなたです」という内容が出るようになったり、カズが「あんたこそがビッグボスだ」と言ってくるあたり、「ヴェノムはビッグボスではない」という真相によりフォーカスしたストーリーラインの予定があったのではないだろうか。正体を知ってるカズはともかくMBスタッフのこのセリフはちょっと浮いてる。二章の予告にパスの病室イベントが含まれていたりするし、パスのイベント自体も事前PVからカットされてるシーンや台詞があるので、本来二章で強制遭遇するイベントだったのでは。
  • でもカズが最初からヴェノムの正体を知っていたとなるとイーライ(リキッド・スネーク)のDNA比較をした時の行動が明らかにおかしい。イーライとヴェノムのDNAを比較して「無関係だった」と言っているものの、恐るべき子供達計画の片割れだと疑うのなら本物のビッグボスのDNAと比較すべきで、その場合結果はまた違っていたはず。少なくとも無関係と断言できる結果にはならなかっただろう。カズは最初からヴェノム≠ビッグボスと知っていたはずなので、ここで変にごまかす理由がない。このあたりは本編未収録に終わった「蝿の王国」に向けた伏線だったのだろうか。
  • 今作のカズは復讐心とケミカルバーガーのキメすぎで頭がおかしくなっているので、気に入らないことがあるとすぐにサイファーのせいにして突っかかってくる。まるでゴルゴムのようになんでもかんでもサイファーに結びつけるアレっぷりはある意味必見。カズヒラといえばコードトーカーの「カズヒラに気を許すな」というデモの真意も曖昧に終わっている。まさか人民解放バーガーの件を指しているとも思われず、コードトーカーが何を危惧したのかよくわからない。カズヒラの最終キャリアはFOX HOUNDの教官であり、そこでマスター・ミラーとして育てたソリッド・スネークにヴェノムが討たれるという未来を暗示していたということなのだろうか。随分遠回しだな!
  • それとは別に今作でミラーは片手片足、そして視力も失ってしまっているわけで、ここからどうやってグリーンベレーやFOX HOUNDの教官に就任するというのだろう。無理では? 最後のオセロットとの会話で「次の世代を育てる」と言っているので、ひとまずこれまでの正史通りの道を歩むようではあるが。
  • 今回みたいにシリアス一辺倒だと杉田智和氏の声はアンマッチだよなあとちょっと思った。PWみたいに作風が明るくネタ要素があるから氏のコメディボイスが馴染んでいたわけで、今作のカズヒラは色々と浮いてる。そんなカズヒラについて「ミラー副司令、変わっちまったな」とマザーベースのスタッフが愚痴るイベントがあるので、アンマッチなことも含めて演出意図どおりなのかもしれないし、そうだったらいいなとも思う。
  • チコ普通に死んでた。お前グレイ・フォックスになるんじゃないの!? ポータブルOPSのストーリーがパラレル送りになってしまった(公式年表から除外)今、メタルギア2やMGSで語られたグレイ・フォックスの設定とビッグボスの経歴矛盾を更新するタイミングはここしかなく、そうなると少年兵上がりのチコはいかにもグレイ・フォックスになりそうだと思っていたんだけど。ところでストーリーの繋がり的にはMGS3→ポータブルOPSMSXメタルギアと繋いだほうが色々しっくり来るよね。もっと言っちゃうとMGSVから直接MSXメタルギアに繋がる要素殆ど無いよね。
  • 「声帯虫」のアイデアは好き。ここから虫つながりで昆虫に話が広がってメタルギア2のOILIX(石油を産出する虫)と話が繋がるのかなと思っていたらマルフ博士すら出ませんでしたとさ。
  • 微生物ネタはいいんだけどMGS3のボス連中の超能力まで微生物の力にすることはなかったよね。MGS3はB級スパイスリラーなので、あいつらも仮面ライダーの怪人みたいな感じの理由無い超能力でよかったやん。
  • 少年兵、というか子供を扱っておきながら、その子供が一切の可愛げを見せることもなく反目だけして消えてゆくという演出はちょっとこれまでに見たことがないので面食らってしまった。もともと少年兵はMGS2で扱う予定があった題材だったはずで、その雪辱だったのかもしれないが、どうもただただイーライくんが腹立たしいというだけで終わっているような気が。しかもイーライくんのストーリーラインは作中で未完なので、限定版の特典映像を観られない人にとってはよくわからんガキ共というだけで終わってしまう……
  • スカルフェイス率いるXOFと泥沼の全面抗争を繰り広げるのかとおもいきや直接的な衝突は殆ど無く、スカルフェイス自身もスネークたちの行動とはあまり関係なく死ぬというのはかなり拍子抜け。スカルフェイス本人にはスネークやゼロへの敵対心や執着心があまりない(目的の障害というだけ)ので絡ませづらいのはわかるけど。ところでサヘラントロプスの制御をマンティスくんに100%依存というのはちょっと計画がグラグラしすぎじゃないですか。事実イーライにマンティスくんを取られただけで詰んだし。土師孝也氏のしつこい演技はほんとうに素晴らしかったですね。ちなみにXOFの兵士が出てくるミッション自体は多くないですが、出てきた場合は地域の警戒度にかかわらず基本的に重武装でヘルメットもなかなか飛ばないのでめんどくさい強敵です。
  • ラストシーン。最初にヴェノムが鏡の中に真実を見た時、背後のドアのロゴはダイヤモンドドッグスだった。そしてテープの「OPERATION INTERLUDE N313(MSXメタルギアの作戦名)」と書かれた面を再生し、脇に置かれたMSX本体(外見からおそらくソニーのHB-F1XD)が光り、再び鏡の前に戻ってきたヴェノムは鏡の中に血塗れの鬼となった自分の姿を見る。それを叩き割り、鏡の内側のヴェノムが闇の中に消えてゆく所で物語は終わるのだが、このときよく見るとダイヤモンドドッグスのロゴだったドアがアウターヘブンのロゴに変わっている。鏡の中に自分を見てから、鬼を見るまでには数年の時間が経過しているらしい。
  • 正直なところこのラストシーンはよくわからない。数年の間に血塗れの鬼と成り果てるほどの悪に堕ちてしまったという表現なのだろうとは思うが、知りたかった、遊びたかったのはまさにその過程、アウターヘブン蜂起に至るまでの物語であって、悪に堕ちたという答え合わせがしたかったわけではない。しかもこの後、FOX HOUND司令官である「本物のビッグボス」は当時最強のFOX HOUND隊員だったグレイ・フォックスと、そのバックアップとして自分のクローンであるソリッド・スネークを送り込んでくるほど本気でアウターヘブンを潰そうとしたわけで、この時点での二人の関係性が不明。自我に目覚めたヴェノムがビッグボスに反旗を翻したのがアウターヘブンだった? それとも(初代の作中でも触れられたとおり)アウターヘブン蜂起をバックアップするつもりがソリッド・スネークが「ヤリスギタ」ので失敗してヴェノムが死ぬ破目になった? でもメタルギア2では「アウターヘブンで重症を負ってサイボーグ化した本物のビッグボス」が出てくるし、年表上もアウターヘブンで死ぬのがヴェノム、メタルギア2のザンジバーランドで(表向き)死ぬのが本物のビッグボスなのは確定しているので、この辺はリメイクなりなんなりで設定を更新してくれないともう整合性取るのが無理そう。
  • ところであのMSXの電源ランプを光らせたテープ、何が吹きこんであったのだろう。ラベルにアウターヘブンへの潜入作戦名が書いてある以上それに関する内容のはず。実はソリッド・スネークへのメッセージはあのテープだったという説はどうだろうか。初代メタルギアでのビッグボスからソリッド・スネークへの通信はすべてあのテープから一方的に流されていたと。「今からソリッド・スネークちう新人をそっちに送るから、あれの通信機向けの周波数にこのテープを流してあのバカ混乱させちゃれ」みたいな。初代メタルギアではこちらからビッグボスをCALLしても殆ど反応がないことへの理由付けにもなるし。
  • アウターヘブン蜂起が実はヴェノムのビッグボスに対する反乱で、ソリッド・スネークの活躍の裏で「最愛の人を自ら殺した」ネイキッド・スネークと「家族同然のMBスタッフを自ら殺した」ヴェノム・スネークのイデオロギー対決が存在したみたいな展開が見たかったなあと思いましたまる
  • 作中のヴェノムの行動はほとんど悪に染まっていない。子供は殺したらゲームオーバーだし、終盤の最大のイベントである隔離棟の仲間殺しですら正当な理由があり、その後の収拾の付け方も含めてその立居振舞はヒロイックですらある(だからこそカズもヴェノムをビッグボスと認めるようになるのだが)。悪に堕ちるとは何だったのか? 正直なところこのキャッチコピーが相応しいのは今作でクズっぷりが明らかになったヒューイか、本編最終盤まで復讐に狂い続けたカズだと思う。
  • 終始グダグダの二章にありながらEP43「死してなお輝く」は「ボスに委ねよう!」から、その後の水葬シーンまで含めて紛れも無くシリーズ随一の名場面で、おそらくこのエピソードは二章の最重要エピソードとして早い段階からイメージができていたんだろうなと思った次第。一方で病院内のカットシーンはそれまで貫いていた「カメラ一台によるドキュメンタリー的演出」から外れてカット割を多用しておりそこが残念。
  • ヒューイ株大暴落。よくぞここまでというレベルのクズっぷりで、田中秀幸氏のすばらしいヘタレ男演技で嫌悪感がさらにブーストして凄いことに。オセロットですらサジを投げるほどの自己愛と支離滅裂ぶりで、カズの「ああいうタイプは死なない」という発言通り彼は再婚までするわけだが、これほどの人物が自分の息子に再婚相手を寝取られたという程度で自殺するタマとは思えないので、エマと無理心中を図ったというのもきっと狂言自殺のつもりが何らかの手違いで自分だけ死んでしまったとかそういうオチだったんだろうな。
  • ここにきてオタコンに「幼少時愛国者側に身柄を管理されていた」という設定が追加。MGS4でサニーとうまくやれていたのは境遇が似ており通じるところがあったからか。


あああいかん書いても書いても書き足りない。まだまだ沢山出てくる。メタルギアに関しては完全に設定厨の側面からも毎回楽しみにしながらシリーズを追っていたので、MGSVは本当に残念でならず、こうして吐き出さずには居られない。未練がある。そう、未練だ。


このエントリは完全に私個人のMGSVのストーリーに対するとりとめのない感想と考察と妄想ではあるが、この内容に何かツッコミを入れたり共感してくれたりというリアクションを取っていただける方。今度ご飯を食べに行きましょう。