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ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

ゾンビU 感想

キャンペーンモードをノーマルで2週。
サバイバルモードは中盤で凡ミスから即死で終了。


「ゾンビ系ホラー映画主人公なりきりゲーム」の一つの到達点。


※本記事はゲーム序盤のネタバレが含まれる可能性があります。




ゾンビUとは、WiiUの本体同時発売ソフトとしてUBIから発売された一人称視点のアドベンチャーゲームである。
ゾンビに汚染されたロンドンに取り残された生存者の一人となって、謎の人物プレッパーからの指示に従い、ロンドンからの脱出を目指すゲームである。


■俺がお前でお前が俺で
このゲームの根底に流れる思想は一つ。「プレイヤー自身とゲーム内の主人公を一体化する事」これにつきる。このゲームのシステムは、全てその思想に基づき、計算して作られている。
例えば、このゲームのメインモニタ側にはHUDらしいHUDがほとんど存在しない。常時表示されているのは武器のレティクル*1のみという潔さで、あとはダメージを受けたら体力ゲージと攻撃を受けた方向が出る、開けられるドア等のアクション可能なオブジェクトに接近したらボタン表示が出る等、状況に応じて最低限の画面表示が行われるようになっており、武器の残弾表示すら存在しない。


そうした通常あるべき画面表示は、すべて手元のゲームパッド画面に押しこめてある。マップ表示、アイテムの管理、装備の切り替えなど、通常自分の目に映らないような情報はすべてゲームパッド側に表示され、装備変更等も原則的にゲームパッドのタッチパネルを使用して行うようになっている。何かにつけ、主人公の視界であるモニタの画面から目を離させるように作ってあり、メインモニタには「普通の人間の目にも見える最低限の情報」しか入らないようになっている。
先述したようにアイテム整理にもゲームパッドを使用する仕組みになっており、ゾンビの死体やゲーム中のオブジェクトからのアイテム回収、バックパックからホルスターへのアイテム装備まで含めて、すべてゲームパッドを見ながら行う必要がある。ゲーム内のギミックによっては、たとえば「手持ちの鍵を目の前の南京錠に使用」というようなイベントまでも、Xボタンワンタッチで主人公がやってくれるというようなゲーム的な文法は基本的に排除してあり、プレイヤーが「手元を見ながら」鍵を開けてやる必要がある。
ゲームパッドは他にも、アイテムや生体反応のスキャン機能を使用する時や固定銃座を使用する時など、頻繁に「画面にゲームパッドを向けて、ゲームパッドを実際に動かして照準を操作」という場面があって、ゲームパッドとメインモニタを視界が行き来する頻度はかなり高い。


何故こういうシステムになっているのかと言うと、先述の通り「プレイヤー自身とゲーム内の主人公を一体化する」ために他ならない。その一環として、このゲームは「プレイヤーのみているものがゲーム内の主人公のみているもの」という姿勢が貫かれているのだ。
このゲームの主人公は普通の人間である。普通の人間は銃の残弾やミニマップが視界内に表示されたりはしないし、目的地までの距離がリアルタイムに見えたりすることも無い。だからHUDに出ない。
スキャンの時にゲームパッドを画面にかざして視点を動かす必要があるのも、主人公にとっては手にしているのはゲームパッドではなく、スキャン機能を有したサバイバルツールだからだ。プレイヤーがゲームパッド越しに視界内をスキャンしているとき、主人公もまた同じことをしているのだ。
スキャンやアイテムの整理に限らず、ゲームパッドを見ながら操作する状態の間は、メインモニタ側には主人公の周囲が表示されるようになっている。つまり「手元から顔をあげて周囲を見回す」という行為を行えるようになっているわけで、これを単なる画面の切り替えではなく、実際にプレイヤー自身に首を動かしてやらせるようにした意義は大きいと思う。


こうしたシステムの積み重ねで、このゲームの没入感は随一だ。ゲームパッドを、モニタのこちら側と向こう側をつなぐ橋渡しとして完璧に機能させている。


■あえて突き放しているゲーム
この没入感の高さがすばらしい長所なのは間違いないが、これはそのまま短所でもある。良くも悪くもゲームパッドありきの操作性となっているので、ゲームパッド側の操作を楽しむ事が出来ない場合、ただのクソゲーになり果ててしまうのだ。
ゲームパッド操作の強いられ方はこれはもう強烈に不便で、いいところで銃の弾倉が尽きてリロード中に噛まれて死亡とか、バックパックの整理にもたついてる間にゾンビに接近されてて死亡とか、ダイヤル錠の回し方やナンバーロックの開け方がわからなくて死亡みたいな不条理な死が頻繁にプレイヤーに降り注ぐ。そうでなくとも、3DSの上下画面と違ってメインモニタとゲームパッドは遠いため、この二つの画面をちらちら見比べるということをやらされるだけでも相当なストレスになるだろう。
先述した「南京錠に鍵を使用する」といったイベントも操作説明がほとんど出ないため、プレイヤー自身がゲームパッドをあれこれつついて「正解の操作」を探し出してやる必要がある。


さらにこのゲームはプレイヤーが弱い。本当に一般的市民程度の攻撃能力しか持たない。もともとゲームの売りとして「噛まれたら即死」というのがあるが、看板に偽りなしで背後からつかまれたら振りほどく機会も無く死ぬ。正面から組みつかれても概ね五分五分の確率で死ぬ。噛まれるだけじゃなくて3発ほど殴られても死ぬ。攻撃行動も基本的に頼りなく、弾薬は貴重品なので迂闊には使えず、かといって使用回数無限のクリケットバットによる近接攻撃は振りが大きい割に威力が弱く、下手すると8発程度殴打しないとゾンビが死んでくれない。
それでもタイマンならクリケットバットを振り回しているだけで何とかなるものの、ゾンビが2体出てきただけでもう驚異になるようなゲームバランスになっている。このゲームが「サバイバルホラー」ゾンビの頭を吹き飛ばす爽快感などとはほど遠いゲームだ。


この煩雑さを「このゲームはこういう思想で作られてるんだなぁ……仕方ないなぁ……」と率先して楽しむ事が出来ないとこのゲームの魅力はまったくわからないと思う。ゾンビへの立ち回りや武器の管理と言ったゲーム的な文法以外に「ゲームパッドというサバイバルツールへの習熟」を、高い水準で要求してくる。そして、プレイヤー自身がゲームパッドの扱いに四苦八苦しているという事は、ゲーム内の主人公も四苦八苦しているということであり、待っているのはゾンビの仲間入りだけである。
とはいえ、下手にこのあたりをフォローしてしまうと、ゲームの主人公とプレイヤーとの間で同じ焦りを共有できなくなってしまう。こうした突き放した姿勢も、ゲーム内外の一体感のためにあえてそうした可能性が高い。


爽快感が無いというところも、このゲームはそもそも一般的なFPSとは違うゲームであると認識すれば頷く事が出来る。サバイバルホラーとプレイヤーの一体感の表現方法として一人称視点を採用したという経緯であって、ドンパチがメインのゲームでは無いのだ。そのためUBIも、このゲームを「シューター」として広報する事はしていない。


■細かく積みあがる不満
とはいえ、それとは別にゲームとしての不満は少なくない。グラフィックは中の中といったところで「ホラー表現として必要最低限の事は出来ています」といった風情だし、ロード時間はかなり長い。全編通して出てくるゾンビの種類も少なく、ストーリー要素も薄い。バグも多めで、攻略手順によっては詰んでしまう場所があるほか、ドアの向こうが読み込めなくて開くはずのドアが開かずに死亡という残念なバグも散見される。
ゲームパッド側の不満で言うと、肝心かなめのUIがズタボロ。もっとも多用する通常画面はまだマシなのだが、アイテム整理の操作はもうちょっとなんとかならなかったのかと思う。通常ゲームプレイが非常に窮屈なゲームなので、その分ゲームパッド側の操作はもっとずっと快適にすべきだったのではないかと思う。
一方で「手際良く整頓する」「自分なりにホルスターにセットしやすい整頓方法にする」等、他のゲームではあまり見られない部分での各プレイヤーの腕前や性格が出せるようになっているので、一概に短所とも言えないのだが、それでもここはもっと譲歩しても良かったと思う。


■結論
粗の少ないゲームでは無い。作り込みの甘い部分は多いし、今まで考えた事も無いような技術の上達を求めてくる事さえある。爽快感とは無縁で、習熟と忍耐を重ねてマップを踏破し、時折訪れる身の安全に胸をなでおろす窮屈なゲームだ。
それでも、このゲームが見せてくれる「モニターの外のオレとモニターの中の彼」の間の壁を薄めた世界と言うのは、現時点で唯一無二のものであると断言できる。怪しい男のナビと、手元のサバイバルツールだけを頼りに、無用な戦闘が起きない事を祈りながら、おっかなびっくりロンドンを歩き回る。
サバイバルホラーゲーム」の新しい形がここにある。


決して間口の広いゲームではないことは重々承知しているが、それでもWiiUで何か一つお勧めを選べと言われれば、ウチは迷いなくこのゲームを挙げるだろう。このためにWiiU本体を購入したのはまったく間違いではなかった。

*1:照準マーク