ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

METAL GEAR RISING:REVENGENCE 感想

ノーマル1周。プレイ時間は最終リザルト画面の表記で3:58。

開発者のツイートによると、この時間はデモシーンやムービーの時間を含まない時間と言う事だ。

 詳細はこちらのまとめを参照。

※本記事はすべて「PS3国内版」をプレイしての内容である事をご承知置きいただきたく。

 

■4年かけた急造品

 METAL GEAR RISING:REVENGENCE(以下、MGR)の歴史は2009年まで遡る。3月に開かれたGDCでの小島秀夫氏の基調講演で存在が示唆され、続く6月のE3で、マイクロソフトの基調講演のラストに小島氏自身が登壇し、デビュートレイラーを発表した。

 

その後断続的に情報を出しつつも発売は未定の状態が続き、2011年に開発をプラチナゲームズに移管していた事が公表され、そこからさらに時が流れ、ことし2013/2/28にようやく発売の運びとなった。

トレイラーが出るたびに変容が見て取れるゲーム内容、開発会社変更といった、内部の混乱を邪推するに十分な材料があり、長い時間を経てようやく発売に至った本タイトル。その内容は、アクションゲームとしての要素とメタルギアとしての要素がお互いを殺し合う、この手のタイトルとしては比較的よくある「残念な」着地点であった。

 

■ノリ切れない目玉要素

アクションゲームとしては、同じプラチナゲームズの「ベヨネッタ」の亜種と思えば良い。画面に表示されたボタンを押してイベントを進めるタイプの、いわゆるQTE多めなのも同じ。

 

特徴的なのが、このゲームにおける主要防御手段となる「シノギ」と「斬撃モード」という2つのシステムである。

 

■シノギに見る防御行動

まずシノギ。これは「敵の攻撃に合わせてその方向にレバーを倒す+攻撃ボタン」で発動する防御行動のこと。海外版では特にひねりなく「パリィ」と呼ばれている。シノギには2段階あり、通常シノギのほかに、敵の攻撃をギリギリまで引きつけてからシノギ入力をするとオートで雷電が反撃を行い、これがヒットすると敵が必ずスタンする。

 

このゲームの敵キャラには、シノギできる攻撃の前に「目が光る」というお約束が仕込まれており、攻撃方向を見きるのはそれなりに容易。スタンは後述の斬撃モードのチャンスであり、また、これ以外に雷電には防御的な行動が用意されていないので、全編にわたって敵の攻撃にシノギを合わせていくことがこのゲームの主なお作法である。

 

シノギ入力自体も、直前シノギでなければ入力はかなりアバウトでよく、敵の目が光ってすぐぐらいに入力しても防御姿勢を取ってくれる。防御姿勢さえとってくれれば少なくともダメージ軽減は保障されるので、敵さえ見えていればシノギが難しいという事にはならないだろう。

そう、見えてさえいれば。

 

さて、比較的アバウトで良いシノギであるが、このゲーム自体はシノギのシステムに対して厳しい作りである。はっきり言ってしまえばカメラがクソ。妙に近くて低いため、画面外から殴られる事故が頻発するのだ。

 

いくら攻撃前に目が光ると言っても、それは画面内にキャラが収まっていて初めてわかるのであって、画面外から殴られるのでは備えのしようが無い。一方でシノギ入力のアバウトさから、画面外の攻撃にボタン入力が反応し、偶然シノギになるという逆方向の事故の発生頻度も高い。

 

ゲームが進むと「ゲーム中に説明なく連続シノギ強制」「真上から降ってくる系シノギ入力方向わからん殺し」「足長ロボの回し蹴り系のシノギ入力方向が敵本体の方向なのか攻撃が飛んでくる方向なのか分からん殺し」「そもそもシノギ不可」など、シノギそのものがストレス要因になっていくのもマイナス。先述した「オート反撃」も、かなり早い段階から「オート反撃をかわす」敵が出てくるうえ、オート反撃が空ぶった隙を殴られたり撃たれたりするのでシステムが半分死んでいる。

 

■斬撃モードの限界

続いて斬撃モード。このゲームの当初からの思想「自由切断」を体現する機能がこれである。ボタンを押すことでいつでも移行でき、使用中は電力ゲージを消費する。内容は「右スティックを倒した方向に刀を振りかぶり、スティックを離すと一直線に斬る」という動作を行うもので、刀の軌跡となる箇所にはガイドが表示され、斬撃モード中はカメラが雷電に寄るため狙いはつけやすい。また、スティックを使わなくても横斬りボタン、縦切りボタンがプリセットで用意されており、切断箇所を特に問わないような場面であれば適当に連打しても問題無い。

 

 

スタンした敵や、特定の攻撃を当てた後に表示される「斬」というガイドが出ているときに斬撃モードを使用すると、斬撃モードで敵を「切断」できるようになっている。斬撃に対する切断方向にはほぼヤラセはなく、斬った箇所がきちんと切断され、しかもかなりのレベルで細切れにする事が可能。

 

 

このゲームの爽快感の大部分を担う重要システムであり、本当に斬った箇所がきちんと切断されるほか、斬った方向や箇所に応じて断面の表現が異なる点など見所が多い。ボタンを適当押ししてグチャグチャに斬るだけでもそれなりの爽快感を得る事が出来る。

 

 

斬撃モードがただの飾りに終わっているわけでもなく、敵の体内に内蔵されている自己修復ユニットを奪い取ってHPなどの各種リソースを回復する「斬奪」はこのゲームの主要回復手段であるほか、ステージによっては「敵指揮官の左手に埋め込まれた認証チップでゲートを突破するため、斬撃で左手を切断して持ってくる」といったギミックにも使用されている。

 

 

■自由切断とは何だったのか

最初のうちは非常に楽しいこの要素なのだが、飽きるのも非常に早い。「斬撃そのものには大して意味が無い」というのがその理由だ。

 

先ほど「ガイドが出ている時に斬撃モードを使用すると、斬撃で切断できる」と書いた。では通常時に斬撃モードで敵を切りつけるとどうなるのか? 答えは「ただダメージが入るだけ」。斬撃モード中は立ち止まって刀を振ることしかできないので、迂闊な使用はむしろピンチを招く。敵のリアクションも「切断されるor切断されない」というリアクションしかせず、切断されたらあとはそのまま死ぬだけなので、斬撃を的確に使用してどうのこうのという場面は殆ど出てこない。あくまで「斬奪による体力回復のための通り道」として斬撃モードがあるだけだ。

 

ゲーム進行に必要なギミックとしての斬撃も、これも先ほど書いた「斬撃で左手を切断して持ってくる」というような要素が数か所存在する程度の事で、これ以上のギミックがそもそもない。硬めの強ザコなどは「腕のみ切断可能」「足のみ切断可能」という状況になったりはするのだが、そこで律儀に斬撃で腕や足を斬り落とすよりは、通常攻撃でスタンまで持って行った方が速いし楽なのだ。

 

 

ボス戦ではこの淡泊さがさらに前面に出ていて「ボスの形態変化の合図としての斬撃モード」以上の使い方がほとんど存在しない。

 

ボスの体力をある程度削った結果として「斬撃モードという名目のデモシーン」があるだけ。「敵の武器を斬るイベント」「敵の装甲を斬るイベント」が、斬撃モードという形で置き換えられているにすぎない。「斬撃モードと言う名のQTE」と言ってもいい。

 

これが一番残念な形で出ているのがラスボス戦だと思う。まさに斬撃モードと言う名のQTE。演出のためのゲームプレイがここにある。

 

 

ここにメタルギアシリーズっぽいステルス要素まで放り込んであるのだから始末に悪い。このゲームは本質的なところでバトルアクションなので、ステルスゲームにあるべき「伏せる」「壁に張り付く」というアクションが存在せず、地形も開けた場所が多いので、ステルスゲームとして取りうるアクションや選択肢がほとんどない。そのためステルスがあまり楽しくない。

発覚判定やステルスキルの成功判定も、いかにもアクションゲームのオマケ要素らしくいまいち理不尽で、何の説明も無く地上ステルスキル不可の雑魚が出てくるなどするので急ごしらえ感が否めない。

そのくせ、後述するバトルの仕様の一つ一つが妙にストレスのたまる仕様になっているので、ステルス中に出来るだけ敵を片づけておきたい気分になる。そのおかげで結果的にステルスキルする方向に思考が向くので、この点においてのみ上手くステルス要素の存在が作用していると言っていい。

 

 

■バトルアクションとしての不満

通常の1対多系バトルアクションとしてみても首をかしげる部分の方が多い。

 

先述したとおり、まずカメラが近く視界が狭い。このゲームの最大の敵はカメラと言ってもいい。それでいて敵のAIは妙に散開するように組まれていて、結果的に画面外からの攻撃が増える。特定の敵へのロックオン機能はあるものの、回り込みや追尾が甘く、多数相手の雑魚戦どころかサシのボス戦にすら違和感が残る有様。

このただでさえゲームに厳しいカメラワークが、ステージ端や壁際ではさらに悲惨な事になる。敵の投げやこちらの必殺技など、演出用のカメラワークが発動する際に壁にカメラが引っ掛かって、どこを向いてるのかよくわからないという事態が往々にして発生する。

敵キャラのルーチンも「妙に散開傾向」「遠距離からのロケランがクソ強い」など、カメラの死角を十二分に活かした連携と攻撃パターンを披露してくれて実に厄介。

 

■死んでいる要素の数々

弱攻撃、強攻撃を絡めた多彩なコンボアクションも魅力のはずなのだが、強攻撃には「モーションを中断してシノギができない」という特性があるため、正直なところ強攻撃と言うシステムが丸ごと死んでいる。強攻撃の威力というメリットより、横から殴られるというリスクの方がはるかに大きい。こちらの攻撃中に普通に割り込んでくるボス戦では、なおのこと強攻撃は使えない。

 

 

一部のステージには「ヤシの木を切り倒して敵に当ててダメージ」など、背景・地形を切断して攻撃に活かすというギミックがあるのだが、これに至ってはもはや邪魔の一言。敵に攻撃できるところまでは良いのだが、斬ってばらばらになったオブジェクトに地形判定がそのまま残ってしまうので、むしろ移動を阻害する要因になりやすい。このゲームのダッシュには障害物をスタイリッシュにかわす余計な機能が付いているので、地面に散らばったヤシの木を宙返りで華麗にかわすガード不能状態を普通に殴られるというコントに発展しがちで、結局のところ使わない方がマシなのだ。

せっかくの切断ギミックも、通常攻撃では狙った方向に斬り倒すのが存外に難しく、かといってこの程度のギミックに電力ゲージ支払って斬撃モードを使うのも面倒くさい。斬り倒した破片を吹き飛ばして敵にぶつけて再利用などと言った気のきいたアクションも用意されていないので、何のためにあるのか分からないギミックになり下がってしまっている。

「閉ざされたドアを斬って進む」「金網を斬って進む」というシーンでこの要素のイライラは最高潮に達する。斬れども斬れども、斬った破片の地形判定が消えてくれないので、破片に引っかかって先に進めないのである。テストプレイでおかしいと思わなかったのだろうか?

これも斬った破片を吹き飛ばすアクションがあるだけで解決する問題のはずなのだが……

 

 

この手のゲームに常に付きまとう「ボス戦がつまらない」という不満も、このゲームはしっかり完備していて抜かりない。どのボスも「斬撃モードのガイド出現かQTE発生待ち」という文法が揺らがない。「飛来する危険物体を斬撃ガイド通りに斬って防ぐ」というシチュエーションを2度も3度も使いまわしてくださるおかげで、覚える事がそれほど多くなくて良いというのもポイントが高い。

 

 

■総評

全ての要素がちぐはぐで詰めの甘い凡作。途中参加のプラチナゲームズを責めるのは酷かもしれないが、少なくともバトルアクションとして同社の「ベヨネッタ」の水準に達していない事は明らか。

脚本についてもグダグダの一言であり「雷電を主人公にしたメタルギアのキャラゲー」としても相当に疑問が残る出来。内容についてはあまり触れないが、ゲームが進むほどに、ゲーム内容と同様スカスカになっていく脚本はある意味見所と言える。いつの間にか主張が変わってるラスボスとか。

もともと「MGS2MGS4の間を埋める」ストーリーだったところを「MGS4以降」の話に変えてしまったので、話の後付け感が強く、無線でもデモシーンでもキャラクターの掘り下げが浅い。主人公の雷電ですら、MGS2MGS4雷電と同一人物なのか疑わしいほど。

 

 

プレイ時間の短さは問題ではない。プレイ中の体験の薄さを問題にすべきなのだ。その点を鑑みると、このゲームにおけるプレイ時間の短さは美徳と言える。「早く終わらせたい」とは考えても「もう1時間遊びたい」と考えるほどの魅力を、このゲームに感じる事はなかったからだ。