ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

METAL GEAR SOLID HD EDITION PSVita版


※本エントリにはPS Vita版「METAL GEAR SOLID HD EDITION」の画像が含まれます。
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■最後発の重み
去年からぽろぽろと発売され、Vita版で完結を迎えた「METAL GEAR SOLID」のHD移植ラッシュ。本記事でメインに取り上げるMGS3は実に5度目の発売日を迎えることになる。MGS2は4度目。
正直なところ、いちばんウリのない機種に移植したバージョンが最後に発売されたわけである。いったいVita版は、ウチのようなトンチキな物好き以外の誰がどう手にとったのか? ファミ通調べによると、先週の時点で約3万人ほどがVita版を購入したそうだ。


【ゲームソフト販売本数ランキング TOP30】集計期間:2012年07月09日〜2012年07月15日 - ファミ通.com


PS2で出たバージョンを除外するとなると、移植版には各機種以下の様な強みがあった。

  • PS3版
    • PS版初代MGSのアーカイブ版ダウンロードコードがついてくるため、MGS PWHDとあわせて購入すればMGSの正史をPS3のみでプレイ可能
  • XBOX360
    • コントローラに箱コントローラを使えるのは大きい。インストすると読み込みが若干早い。MGS3も60fps安定で処理落ち皆無。
  • 3DS
    • 地獄のようなフレームレートでここだけ見ると相当に出来が悪い(実際悪い)が、下画面の常時マップ表示や、操作系がMGS4〜PWに置き換わっているなど、プレイアビリティの点では据置版より向上。ただし拡張スライドパッドは必須。


そこへ来てのVita移植である。正直、このバージョンは3DS版とはまた違う種類の問題が多い。


■Vita版の問題
遊んでてとにかく気になるのはエリア間の読み込みの長さ。おそらく移植版の中では一番長い。1エリアあたりが比較的広いMGS3はともかく、しょっちゅうエリアが切り替わるMGS2ではこれがかなりのストレス。


この読み込みがほんとうに長い


そしてボタン数からくるストレスも大きい。VitaにはL2・R2やスティック押し込みがなく、3DSのような拡張スライドパッドといった飛び道具も使用できないため、武器切り替えなどを大胆にタッチパネル、背面タッチパネルにアサインしなおしてあるのだが、この操作性がちょっと……かなり悪い。
少なくともスムーズに武器や装備アイテムの切り替えができるようになるまでにはそれなりの修練を要するはずだ。ウチ個人としては「指でメイン画面上をスライド」という操作をかなりの頻度で共用されるのは正直辟易した。
MGS3のサバイバルビュアー画面の「CURE」が従来通りの操作で画面が反応せずに首を傾げたのはウチだけではないはずだ。右手の親指でアイテムをタッチしっぱなし、そこへ方向キー左を押して治療実行という操作にも疑問しか感じない。


■操作と読み込み以外はソツのない移植
ゲーム内容自体は、PS2版「サブスタンス」および「サブシスタンス」の移植が問題なく動いているといっていいだろう。Vita版は若干画面解像度が低く、ドットバイドットの表示になってはいないのだが、PS3/Xbox360版では逆にテクスチャののっぺり具合が露呈するという微妙な結果になっていたので、これは結果的に功を奏しているといっていいだろう。
MGS2fpsが全体的にPS2版より低く、ほぼ30fpsでの描画になるもののゲームに支障はない。サブシスタンスで収録されていたMSX版MS・MG2の移植も収録されている。3DS版とは違う。
MGS3についても、常時安定して30fpsの描画が実現できており、3DS版の悪夢のような処理落ち具合とは一線を画している。


3DS版のやる気の無さがかいま見られる蜂のシーンもきちんとしている。


■Vita版の価値
ここで最初の話に戻ってくるわけだが、正直なところ、「Vitaで出たこと」以外にVita版の価値はないのだ。このゲームはVitaの窮屈な操作性で遊ぶには内容がつらすぎる。この点は3DS版にすら劣るところで、あちらは「拡張スライドパッド装備という条件の上では」操作性のモダン化によって、実はかなり遊べる操作には仕上がっていた。
一応、Vita版には「トランスファリング」という、PS3版とVita版でセーブデータを共有できる機能がある。が、それがあるからどうだというのか?
トランスファリングの恩恵を受けられるのは、PS3版とVita版、両方の製品版を持っているというユーザーである。それもゲーム内容は全く同じなのである。いったいそんなリッチな遊びをする人間を何人見込んでこんな機能を入れたのだろうか? 断言するが、操作性の悪化と、いちいちPSNに接続してセーブデータの同期をとる手間をかけてまで、PS3とVitaでMGSを遊びたいなどという人間はほんのひとにぎりだろう。全体の1%いればいいほうだ。
トランスファリングの試み自体を否定するつもりはないが、このゲームでそれをやろうという人間はまずいないだろう。面倒くささが先に立つ。


■どれを選ぶべきか
「今から」MGSシリーズを遊びたい、または現行機で遊べるバージョンがほしいという人には、どう考えても据置版のHD EDITIONが最適解になるだろう。
PS3を持っているならPS3版、そうでなければXbox360版を選べばいい。先述の通りPS3版なら初代MGSのダウンロードコードがついてくる。
一風変わったバージョンが遊びたい人には3DS版だ。劣悪すぎる処理落ちでおそらくまともに楽しむことは出来まいが、逆にそこさえ我慢できればプレイアビリティの向上や、他機種では得られない立体視のデモシーンは、もともとのデモシーンがしっかり作ってあることもあってかなり見応えはある。デモシーンも処理落ちで死ぬけど。
そしてこのVita版は……正直な気持ちで言えば「やめとけ」の一言。悪いことは言わないから据置版を買うべき。
Vitaしかゲームハードを所有していなくて、それでもMGSシリーズに触れてみたい。そこまで思いつめてから、初めて購入の検討をする程度でいいだろう。そこまで対象として絞り込まれない限り、Vita版を購入する理由はウチには思いつかない。