ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

NINJA GAIDEN 3 感想


アクションゲームとしては及第点。
NINJA GAIDENシリーズとしては大幅な退化。


NINJA GAIDEN 3は、コーエーテクモゲームズのTeam NINJAが送り出す、NINJA GAIDENシリーズの3作目である。個人的に、このゲームには大いに注目していた。前作までのNINJA GAIDENを非常に気に入っていたこともあるし、細かいことは省くが開発のTeam NINJAのお家騒動で、前作までの総監督を務めた人物がいなくなった後の初のシリーズ作品であり、どのように前作までのスピリットを引き継いでいるのか注目していたのだ。


他方、発売前から良からぬ雰囲気が漂っていたフシはあった。武器は刀のみ、主人公の業をテーマにしたストーリー、QTE要素。新情報が解禁される度に感じたどことない不安は、果たしてそのまま的中してしまった。


※以降の文章はストーリーモードに特化した内容であり、NINJA TRIALSおよびオンラインのクランバトルに関しては触れていない。


■シリーズ作品の自覚の欠落


XBOXから始まった、NINJA GAIDEN(以下ニンジャガ)シリーズの魅力とは何だろう。身も凍るほどの難易度だろうか。それとも殺意たっぷりの敵AIとの鍔迫り合いだろうか。


ウチ自身は「意のままに動く操作性」だと考えている。このシリーズを語る上で外せない、最高難易度モードの苦行とも言えるゲーム内容も、最終的に「操作をミスした」「判断を誤った」と、ゲームオーバーの責任が常にプレイヤー自身にあることを納得できる操作性の上に成り立っていた。


この点は前作にあたるニンジャガ2では、かなり高いレベルで実現されていた。スティックを倒す時、ボタンを押した時、画面内の龍の忍者は間髪入れずにアクションを起こす。アクション自体の自由度も非常に高く、やられモーション以外ならほぼどんな動作もキャンセルできる無敵回避の裏風、手裏剣キャンセル、ホーミングジャンプの風駆、敵を踏みつけて活路を見出す無敵移動の風路。アクションゲームのプレイヤーキャラとしては破格のハイスペックを誇るリュウ・ハヤブサという超忍は、それ自体がプレイヤーへのプレッシャーであった。これだけ強いのにそれでも死んだら、それはプレイヤーが悪いということだと。


翻ってこのゲームはどうだろう。基本的なモーションや立ち回りは前作までとほとんど変わりないように見える。だが、前作に触れたことのある人であれば、妙に攻撃後の硬直や、キャンセル不可時間が増えているように感じるだろう。弱攻撃のコンボを途中でやめた時の硬直や、手裏剣投擲後の隙の長さに特に顕著だ。プレイヤーの入力を受け付けない時間というのが、前作までに比べて非常に多くなっている。


これは明らかな退化といえる。これまでのシリーズで最も重要視され、高難易度やゲーム設計に説得力を持たせるための背骨となっていた俊敏無比な操作性を、今作はあっさりと捨ててしまった。今作の開発者の言葉を借りれば「刀の重さを表現」した結果なのかも知れないが、これまでのシリーズで当たり前にできたことが急にできなくなったというストレス以外の何かを感じることはない。シリーズのアイデンティティを自ら投げ捨ててしまったのだ。


■切り捨てたもの


捨て去ったのは操作性ばかりではない。というよりは、このゲームからは「前作までのゲーム内容」を徹底的に否定する姿勢を感じる。


それは、このゲームに攻略の自由度が殆ど存在しない点に現れている。まずは武器持ち替えの概念がなくなった。開発側も公言しているとおり、このゲームの武器は最初から最後まで刀のみである。ストーリー展開上刀を持ち替えたり、その結果として必殺技のモーション変化や攻撃力の上昇などといった要素はあるが、ヌンチャクやフレイル、鎌といった複数の武器を、気分や状況に応じて持ち替える要素はオミットされた。


ストックアイテムの概念も削除された。前作までは回復アイテムや復活アイテムといった、プレイヤーが任意に使用できるアイテムがいくつか用意されており、ゲーム攻略の助けとすることが出来たが、今作にはこの要素は一切存在しない。当然、ショップなども登場しない。


絶技や忍法といった必殺技の発動も、プレイヤーが任意に行うことは出来なくなった。前作では絶技はタメによる任意発動であり、忍法は回数制による任意発動であった。どちらも全身無敵のうえ敵に大ダメージを与えられる要素であり、高次難易度に限らず攻略の要やアクセントとして機能していた。今作ではどちらも、発動こそ任意であるものの、あらかじめ設定された場所でしか発動できなくなった。それも敵を倒してゲージを稼ぐことでようやく発動条件を満たすという仕様である。ゲージの持ち越しもできず、忍法ゲージは体力の回復にあてられるものの絶技ゲージは切り捨てである。


この変更からは開発陣の、前作までに存在した攻略の自由度を、あるいはプレイヤーの意思や腕前による不確定要素の介入を徹底的に忌避する姿勢がうかがえる。その結果、少なくとも遊びや攻略の幅は非常に狭くなった。なにせ攻略手段を選択する自由がプレイヤーに与えられていないのだから。回復アイテムがぶ飲みによるごり押しなどもってのほかである。


これらの削除要素の代替手段を殆ど用意しなかったことは、開発陣のある種の自信の表れとも取れる。これらの要素を不要と切り捨て、最終的に残した部分だけが開発陣の想定する攻略法であり、それが最も魅力的で楽しいものだという自信である。


残念だがこの姿勢には疑問を呈さざるを得ない。ここまでゲームを窮屈にする必要があったのだろうか? ウチはこのゲームからは開発陣の押し付けしか感じることが出来ない。攻略法は多ければ多いほど良い、自由度は高ければ高いほど良い、などとは言うつもりは無いが、このゲームは逆に窮屈すぎる。これまでのシリーズが持っていて、プレイヤーに与えてくれていた選択肢を、選択する自由ごと切り捨てる必要はなかったのではないか?


■断骨


前作の「欠損」→「滅却」の流れにあたるものが「断骨」と呼ばれる今作のウリのシステムである。体力の低下した敵キャラに攻撃をするとランダムで発動し、画面にボタンが表示される。指示されたボタンを押せば、敵を無力な「瀕死」状態に追い込むことができる。これだけだと何のためにあるのか全く分からないシステムだが、「断骨」後の最初の一撃*1は、敵の体力にかかわらずかならず断骨発動属性がつくので、断骨→断骨→断骨……と連続でつなげていく「断骨連鎖*2」がこのゲームの肝となっている。


とくに連鎖断骨はこのゲームの重要テクニックの一つで、高次難易度の硬い敵はマトモに斬り合うと99%負けるので、「他の雑魚敵で断骨発動→連鎖断骨に強雑魚を巻き込む」というテクニックの習得が必須になる。これ自体は新要素として認知されるべきものなのだが、ゲーム中にこれについての説明が一切ないのは正直どうかと思う。連鎖断骨は隠しテクニックとして伏せるにしても、毎回毎回ボタン入力を強制させられ、しかも失敗すれば無視できないダメージを受ける「断骨」について何らかの説明があっても良かったのではないだろうか。


また、表向き発動が運任せになり、断骨発動を前提とした立ち回りを構築しづらいのも疑問。「表向き」と書いたのは、断骨を100%発動させる隠しテクニックが存在するからなのだが、ゲーム中盤あたりからこの方法が通用しない敵キャラが登場し、そういう敵と一緒に出てくる奴に限って、できれば連鎖断骨で片付けたい面倒な敵キャラだったりするのである。


断骨システムを抜きに考えても、今作の敵キャラはこれまでのシリーズとは違った方向に強い。具体的に言うと投げが強い。どのくらい投げが強いかというと、このゲームの死因の8割は敵の割り込み投げからのコンボだと断言できるくらい強い。


難易度ハード以上の敵キャラの思考ルーチンは、どうも「いかに投げを差し込むか」という点を中心に組み立てられているようで、こちらの飯綱落しの硬直、スライディング断骨の硬直、はてはこちらのコンボに割り込んでの投げなど、とにかく頻繁かつ理不尽なタイミングで投げが飛んでくるので、攻撃を1回振るにもかなり気を使うゲームになる。今作では投げを打撃で潰すことが出来ず、前述のハヤブサの硬直増加のせいで、割り込み投げの回避が非常に困難な仕様になっていることもあって、投げ関連の攻防は非常にストレスフル。


敵はスーパーアーマーつき投げを持っているのに、ハヤブサからは首切り投げが削除されており、敵のガードを崩す手段が皆無になったのも痛い。ハード移行の敵は確実にガードキャンセル投げを放ってくるので、これまでのシリーズであれば首切り投げでこかしてダウン追い打ちで殺すという戦法をとりたくなるが、今回はそもそも首切り投げがないので、まずコンボの1発目をガードされないように祈るところから立ち回りが始まるのだ。こういうバトル関連の細かな仕様からも、前作からの退行を感じてしまう。


加えて、まともに斬り結ぶのが馬鹿らしくなるくらい弓攻撃が強い。安定した攻略をするのであれば、敵から距離をとってひたすら弓を撃ちまくるのが最適解なのではないかと思えるほどだ。ゲームを通じてかなりの強敵となるゴリラ型雑魚、錬金術師兵などはとくにそうで、こいつらとはまともに斬り合わないほうがいいだろう。


■ストーリー演出のゲームプレイへの持ち込み


今作はストーリー要素を全面に押し出しており、ゲームプレイ中にも「呪われた右腕が疼きだし、満足に身動きのとれなくなるリュウ・ハヤブサ」を操作させられるシーンが何度か出てくる。これに関しては余計な演出としか思えない。一度ならまだいいのだが、ストーリー中何度もこの退屈な操作をさせられることになる。


随所に取り入れられたQTE要素も果たして必要だったか疑問。QTEの入るシーンの傾向にしても、過去作だったら完全デモシーンで流すか、そもそもプレイヤー自身に操作させていた部分である。ストーリー中何度かクナイで壁を登る「クナイクライム」と呼ばれるシーンがあるが、これにいたってはもはや存在理由が分からない。早い段階で「登っている壁の上を戦闘機が通過」とかいう演出が出てくるので、いまさらMODERN WARFAREのオマージュのつもりだったのだろうか。


■総評


ニンジャガシリーズとしてでなく、単なるアクションゲームの新作として見た場合は及第点を与えても良い内容ではある。しかし、このゲームのタイトルは「NINJA GAIDEN 3」なのだ。シリーズ作品としてはほぼ全ての面で退化しか感じることができない。かと言って新規プレイヤーに訴求するには、このゲームはあまりにも不親切すぎる。


前作までのフォロワーの大半を切り離す作りでありながら、前作までの知識が前提となっているちぐはぐなゲーム。開発陣が想定した「このゲームを手にとって欲しい層」はどのあたりだったのだろうか? もっとも、ウチがその対象に入っていないことだけは確かだが。

*1:実際にはもうちょっと複雑な法則がある

*2:正式名称が不明なので、本稿では便宜上この名前で通す