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ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

墨鬼 感想


3周クリア。
このゲームは、まず右手で本体をもつことを諦めることから始まる。


※試験的にスクリーンショットを掲載してレビューを作成しています。
※掲載したスクリーンショットの全ては、PS Vitaの公式機能で撮影されたものであり、
 各画像の著作権は株式会社アクワイア様に帰属いたします。


主人公である赤鬼を方向キーで操作し、敵を撃破しながらステージを進んでいく
これだけ見ると非常にオーソドックスな横スクロールACT。


このゲームの肝は、タッチパネルを直接なぞることで画面内に墨で線を引くタッチアクション操作である。状況によっては線が足場になったり、あるいは線の部分が燃え上がり、敵にダメージを与えたりすることができる。
最終的にステージ右端に存在するボスキャラクターを撃破するか、ゴールに到達すればステージクリアとなる。一部のステージでは「制限時間内を生き残れ」というステージも存在する。



水墨画風のアートワーク。


■タッチパネル操作の是非


方向キー操作とタッチパネル操作の融合は難しい。これは「ボタンを押す」「パネルをタッチする」の2つのアクションを、右手一本で行うのは非常に難しいからだ。
このゲームのように、主人公の操作とタッチパネル操作が混在するゲームとなればなおさらである。

この操作上の問題を、墨鬼では「右手側のボタン操作をタッチパネル操作に集約」することで解決を試みている。
と言ってもそれほど複雑なことではなく、単に「画面タッチで通常攻撃、画面をなぞると墨発動」と、通常攻撃を画面タッチで発動できるようになっているだけである。


このおかげで、右手に関してはタッチパネル操作に集中することができる。
主人公の移動操作に関しては、ジャンプも含めてすべて方向キーで行うことができるし、このゲームは画面をなぞって線を引く操作が主体となるゲームなので
右手が本体をホールドしていると、画面の右側1/3程度にしか触れることが出来ず、都合がわるいのだ。
思い切って右手を本体から離し、我慢して左手一本で本体を支えるか、右側だけ床において遊ぶと、操作に関してはかなり具合が良くなる。このゲームの右側ボタンの操作は飾りだ。
Vita本体を左手のみで支えるスタイルが、このゲームに関しては最も正しい本体の持ち方だとウチは理解した。


しかし、調子にのって背面タッチパネルまで使用する操作にしているのはいただけない。このゲームの「画面に線を引く」アクションというのは、原則的に「墨汁ゲージ」という、有限のリソースを使用して行うようになっている。
ゲージがなければもちろん、線は引けなくなるのだが、このゲージの回復手段というのが「Vita本体を硯に見立て、背面タッチパネルをこする」ことなのだ。
先ほどの「左手持ち」ではこの操作ができない。この状態から左手のみで背面タッチパネルをこするのは体勢的に非常に厳しいものがある。


これで一番困るのはボス戦で、道中の雑魚戦などは、障害物や敵を倒せばゲージ回復アイテムが潤沢に出てくるのでなんとかなるのだが、ボスではそういうわけにも行かない。
ならばそもそもゲージ無しで切り抜ければいいのでは? と思うかも知れないが、このゲームは要所要所でゲージ使用を強制する仕組みが作ってあって、どうしても墨汁ゲージを使用せざるを得ない状況が多々存在するのだ。
ダメージ地形を床に大量に配置して、ジャンプでは超えられないような場面があったりボス敵が足場なしには回避不能な極太レーザーを撃ってきたりする程度のことではあるのだが、とくに各ルートのラスボスに関しては大体こういう攻撃が用意されていると思っていい。


■起伏のないゲーム内容


そして、先述した点も含めてこのゲームには根本的な問題点が存在する。
このゲームは退屈なのだ。


このゲームのステージパターンが「敵ボスの撃破」「ゴール地点への到達」「制限時間生存」なのは先述したとおりだが、ステージバリエーションが本当にそれしか無いのだ。
たとえば「敵ボスの撃破」というステージの場合、ザコ敵を斬り伏せながら画面右側に進んでいくと、一旦スクロールが停止して、画面内で延々ザコを吐き出し続けるジェネレータを破壊する場面があり、それを突破するとまたしばらく進んでボス戦……というテンプレがあるのだが、このテンプレが崩れるステージがほとんど存在しない。せいぜい出現する敵やダメージ地形の配置がいやらしくなる程度のことだ。
1ステージあたりの所要時間も平均して5分以下と非常に短く、ステージの印象がどうのこうのと論ずる前にステージが終わってしまう。
ゲーム全体にわたって、出現するステージギミックの種類がそれほど多くない点がそれを助長する。基本的に敵が多くなり、ダメージ地形が地面を覆う比率が上がっていくだけだ。


ステージの変化の少なさもさることながら、この退屈さの根底には「墨」の使い道が乏しいことがある。「画面に自由に線が引けます。線を引いたら足場に出来ます」というだけで、このゲームは力尽きてしまっているのだ。
公式サイトを見てみよう。システム紹介の項で「炎の筆」「雷雲の筆」「水筆で水蒸気発生」など多くの要素が並んでおり、筆には色々な使い方があるように見える。
だが、このテクニックの大半には使い道がないのだ。使えるのは敵の弓矢が燃やせる「炎の筆」程度で、「雷雲の筆」は墨汁の消費量に威力が見合っていないし、水蒸気に至っては、どこで使えばいいのかわからない。
味方キャラの召喚という要素もあるものの、これは「メニューを出して選択」という部分を「画面を止めて召喚モードにしてから線を引いて呼び出す」という動作で肩代わりしているだけに過ぎず、タッチパネルで行う必然性が全くない。
この操作を活かしたギミックを期待していただけに、この点には大いに失望させられた。



召喚の儀。まずLボタンを押して画面を止める。



動きが止まるので左右にある召喚スイッチをタッチ。なお、ここで普通に線を引くと、時間停止解除時に燃え上がる「炎の筆」となる。



一筆書きの画面が出現。言われたとおりに一筆書きをすると……



ようやく召喚。こんなステップを踏む理由がどこに?


■襲い来るストレス


やれることは少ないのに、ストレスだけはきちんと強いるゲーム内容なのも見逃せない。
このゲームにはステージごとに「所要時間」「受けたダメージ」から三段階の評価が下される仕組みがあるのだが、この評価によって、分岐先のステージが決定されるようになっており、より良い結末を迎えるためには、分岐ステージでのステージ評価を最高の三ツ星で終えなければならないのだ。とくにダメージ評価は非常に厳しく、ノーダメージでステージクリアするためには非常に慎重なプレイが必要になる。そして慎重にプレイしようとすると、先述したこのゲームの起伏のなさがどうしても目に付くしくみになっているのだ。
ノーダメージを阻むための敵の攻撃も全体的に「ザコに弾幕張らせてどこかで一発事故らせればいいや」という思考が見え隠れしているように思える。「水筆」という、墨汁ゲージを消費して「敵の弾と、通常筆で描いた足場を消す」というシステムがあり、このシステムがあるが故に敵の攻撃を弾幕に頼ってるフシも見受けられる。
ボス戦などは特に顕著で、ボスの巨体に張り付いて攻撃したくても、ボスのどこかしらに砲台的なギミックが置いてあり、これが常に主人公の位置をサーチしつつゼロ距離射撃をしてくるせいで、敵に近づくことそのものが非常にリスキーな行為になっている。
これ自体は普通のことなのだが、ボスの強さ・硬さと前述の評価システムの相乗効果で、一発ダメージを受けることそのものが強烈なストレスになる。
「書いた足場に乗っている時間に比例して攻撃力上昇」というシステムがあるので、足場の上に乗って接近で殴りたくなるがこれも罠。足場を書いてから消えるまでの時間のランダム幅が激しく、消えるときにはほぼ前触れなしでスッと消えるので対処が難しい。そして落ちた先にはたいてザコ敵が待っていて接触ダメージ。
どうにもこうにも納得できない理不尽さが常に付きまとうゲーム内容。ここはさじ加減や好みでどうとでも受け取れる部分なのだが、ウチにはこの理不尽を楽しむことがどうしてもできない。


ハードに振り回されている点も感じる。
たとえば、床一面に配置されたダメージ床を、巧みな線さばきで足場を作って渡っていくシーンがある。「爪先」や「ペン」ではなく「指先」で線を引く弊害がここで出る。線を引く始点がズレやすいのだ。
指を当ててから右にすっと動かすと、線の始点がかなり右側にずれていることが多い。このあたりは体験版を触っていただければ良いと思う。


自分の指で敵や先の地形が隠れやすいというところもかなり気になる部分。このゲームの敵の弾速は結構早く、とくに弓矢などは山なりの絶妙な軌道をとりつつ、そこそこの弾速で飛んでくる事が多く、これが自分の指に隠れて飛んできて一発もらった時のストレスは筆舌に尽くしがたい。
要するに、ゲーム内容とデバイスの相性が噛み合っていないのである。


■タッチパネルアクションとしての墨鬼


ボス戦においては、このリスクを回避する方法が存在する。それはとことん遠距離戦に徹することだ。ここでようやく「炎の筆」などの特殊攻撃が日の目を見る。この攻撃のための線引きは墨汁の消費量が激しく、火炎攻撃そのものも通常攻撃より攻撃力がやや弱いという欠点はあるものの、墨汁さえあればいつでも、どこでも攻撃できるのは強い。
これに味方の召喚術をあわせて使えば、ラスボス以外はほぼ封殺できる。墨汁ゲージは本体裏面をこすることでいつでも回復できるので、「召喚→こすり→炎上→こすり→召喚→〜〜」というループが成り立つ。さらにちょっとタッチが忙しくなるが、水筆で敵弾を消してしまえば、もう主人公は動く必要すらなくなる。
これで沈まないのはラスボスくらいなものだが、ラストステージまで来てさえしまえば評価に関係なくそのルートのエンディングは確定しているので、そもそも評価を気にしてこのような胃の痛いプレイングをする必要がない。


ボス戦のこれこそがこのゲームの真の姿なのかも知れない。不動の主人公を守りつつ、タッチさばきで敵と敵弾をいなし、減ったリソースはすばやくコスって補充。横スクロールアクションとしての要素は飾りだ。
正直、イライラしながらボスをタッチパネルごとぺしぺし叩いているよりも、こちらの遊び方のほうが面白く感じる。あえてタッチパネルオンリーアクションゲームとして遊べば、このゲームの姿も変わって見えるかも知れない。



こういう遊び方もあるということで。


■総評


思うに、このゲームに多彩なギミックといった、プラットフォーム型アクションゲームのような魅力を求めてしまったのがそもそもの間違いだったかもしれない。
敵を倒して右に進む「だけ」のゲームだと知っていれば、ウチは買わなかったはずだ。
タッチ操作重視にした内容そのものはいい。ただ、ウチにはこのゲームの「横スクロールアクションゲームとしての魅力」はどうしてもわからない。
それならばとタッチパネル「のみ」で遊ぶ方法を実践しても見たが、このゲームは本来そういう遊び方を想定して作られたわけではないので、それ専門に作りこまれたゲームの足元にも及ばない。
方向キー操作とタッチパネル操作の共存に一定の可能性を提示したことだけは確かだが、4980円+消費税という値段設定は対価というには高すぎる。