ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

バットマン・イヤーワン/イヤーツー 読了

最近アメコミと嘘喰いしか読んでないな。


イヤーワンは「私は何者か、如何にしてこうなったか」という言葉から始まる
自警団(ヴィジランテ)白帯のブルース・ウェイン
持ち前の正義感から疎まれゴッサム・シティに左遷されてきた刑事ジェームズ・ゴードンの
それぞれの1年目を描く傑作。
フランク・ミラーのハードボイルドなプロットと
ディヴィット・マズッケリのシンプルな作画が実に素晴らしく、
アメコミ初心者やバットマンの入門として誰にでもおすすめできる作品となっています。


現在のバットマン設定のベースとなっているだけあって
バットマンことブルース・ウェインの生い立ち、
バットマンの協力者にして無二の親友ゴードン本部長との出会いと友情などが骨太に語られ、
とくに影の主役と言えるゴードンの苦悩が素晴らしい。
自らの危険を省みず浮浪者を救ったことで窮地に陥るバットマン
警察内部の汚職と奸計に疲れはてたところに
バットマン排除のために浮浪者ごとビルを爆撃する事態を目の当たりにするゴードン。
一方で身重の妻がありながら部下と不倫に走ってしまった無力な自分と
変装のために拝借したスーツの代金まで律儀に置いていった謎の自警団を鑑みて、
深く思い悩むゴードンはこのストーリーのもう一人の主役と言っていいと思います。


翻ってイヤーツー。
過去、都合3回翻訳されているイヤーワン(小プロの「バットマン/スーパーマン」誌版、ジャイブ版、今回のヴィレッジブックス版)と比べ、
翻訳は1度のみ、しかも途中で打ち切られたため未完ということで、むしろイヤーツーの完訳のために
わざわざイヤーワンを新訳したのではないかと思わせるカップリング。
ストーリーとしてはイヤーワンの続編であり、バットマンの活動2年目、バットマンがアンチクライムヒーローを志す直接の原因である
両親の殺害犯を目の当たりにしたバットマンと、かつてバットマンと同じくゴッサムで「罪人を容赦なく殺害する」手段でもって
自警活動を行っていた殺人鬼「リーパー」の確執を描く物語。


待望の完訳なのであるが、個人的にはちょっといまいちだったかなと。
本に挟み込まれている恒例の注釈にも書かれている通り
ペンシラー(作画)とインカー(彩色)が都合3回交代していて散漫な印象を受けるところと
全体的に構成が駆け足過ぎるところが原因かな。
あれほど銃嫌いだったはずのバットマンが普通に銃を使ったり(殺害目的ではないにしろ)
リーパーの強さに背景がなかったり。
リーパーやウェイン夫妻の敵ジョー・チルなどという設定自体には面白いものがあるのになあ。


イヤーツーは完結編の「フル・サークル」も含めてどうにも印象に残らない。
絵柄的にもかなりバタ臭い方面でのアメコミアメコミした絵なのでこの点でも他人におすすめしづらいのが辛いところ。
フル・サークルは絵柄のバタ臭さに加えてロビンも出てきたりするので、前知識のない人にはさらにおすすめしづらい。
交代後のペンシラーをトッド・マクファーレンがやってたりと妙な見どころがあるにはあるが……
この人は本当にオッサンの小汚い顔と散らかった路地裏が大好きだな。


評価としてはイヤーワンは文句なくおすすめ。イヤーツーはちょっとうーんな出来。
イヤーワンはジャイブ版がアホみたいな値段になってるのでイヤーワン目的にこの本を買っても損はしないと思います。