ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

TOP 10 日本語版 読了

今現在日本で読めそうな既刊のアラン・ムーア作品中では異質といえる
肩の力を抜いて読める作品。

  • 近未来、ミュータント隔離政策により構築された大都市"ネオポリス"街の治安を守るべく奔走する第10分署「TOP 10」の面々の奮闘を、アカデミー上がりの新任刑事「ロビン"トイボックス"スリンガー」を中心に描くポリス・コメディ。


作風は基本的に明るく、異星人の住民票交付や透明人間な痴漢の捜査、大怪獣相手のネゴシエーションまでこなすTOP10の面々の生活と各々の職務と、
本筋のストーリーラインである事件の捜査も平行して語られるという手法と
雑多で猥雑なネオポリスの雰囲気がうまく伝わってくる絵柄で
海外のコメディドラマに超人や怪獣といった要素を混ぜ込むとこういう風になるんだろうなという空気がうまくにじみ出ていると思います。


警官から街の住人1人1人に至るまで全員がイレギュラーな方々ばかりなので
やれテレパスで尻を触られただの
盲目ドライバー(テキトーに走らせれば自分と乗客だけは目的地に無事着く能力)タクシーに
ハネられそうになって怪我をしただの遠洋の島に退去命令が出ていたはずの大怪獣が攻めてきただの
TOP10の面々が捜査に乗り出す事件から街中での小競り合いに至るまでの猥雑さが至る所に書き込まれており
「迫害に怯える事も、ヒーローとして活躍することもない一般人レベルのミュータント」
という、なかなか見られないシチュエーションはムーアならではのものか。


そしてムーア作品によくある情報量の多さも圧巻で、ときには主人公たち以上のスペースを割いて
背景のモブキャラたちの口論ややりとりがいちいち吹き出しを割いて描写されているので
非常にうるさい印象を受けるのもこのコミックの特徴。
先ほどか申し上げている雑多さ、猥雑さというのはこのセリフ量から来ているところが多く、
物語の内容によるものとは少々別の方面で疲労感のある作品かもしれません。


ムーア特有の思想感やシニカルさは少なく(皆無というわけではない)、絵も比較的読みやすい部類に入るため
初心者にもお勧めできる極めて間口の広いアメコミです。
キャラクターがかなり立っており、話もなかなか読ませます。お勧めです。