ゲヱム日々是徒然

No VideoGame. No Life.

バットマン ダークナイト・リターンズ(日本語版) 読了

絶版で中古でも高値安定しまくってた
ダークナイト・リターンズ」「ダークナイト・ストライクス・アゲイン」が1冊になったお徳版。


老骨に鞭打って夜の世界にカムバックするブルース・ウェイン(バットマン)の孤独な戦いと
政府御用の超人となって生きるクラーク・ケント(スーパーマン)の葛藤、
そして両者のイデオロギー対決というエピソードを軸とし、「ヒーローとは何か?」
「もし覆面ヒーローがこの世に存在したら、我々はそれを受け入れるべきなのか?」というテーマを
社会性、政治色の極めて強い内容で書き上げた骨太な1作。


冷戦下という舞台設定から来る暴力的で退廃的な空気さえ漂う世界観と表現は
まったく同時期に発表された「WATCHMEN」に通じるところがあり、
社会を乱す者としてヒーローが追われる立場になるという下りも似ているのですが
WATCHMEN」がヒーローの存在や理念までも徹底的に皮肉っていたのに対して
ダークナイト・リターンズ」はヒーローの思想・思考そのものには敬意を払って尊重しつつも
それを社会とのかかわりや、二人のヒーローの相容れることのない思想という点で
別の観点から「現代に生きるヒーロー」の物語を構築することに成功している。


ストーリー・世界観・内包するテーマすべてが暗く重い作品であり
1ページあたりのコマ数、ネーム量も非常に多く、
WATCHMENと同じく「冷戦下で生まれた作品である」ことを念頭におく必要があるので若干敷居は高いのだけれど
映画「バットマン・ビギンズ」「ダークナイト」の源流である、
現代のハードボイルドなバットマンの原点が知りたいあなたに是非お勧め。


「ストライクス・アゲイン」のほうは絵やカラーがかなり特殊な描かれ方をしていたり
世界設定やプロットがかなりブッ飛んでるので
はっきり言って初心者にはお勧めできない内容になっています。
スーパーマンをはじめDCコミックスの他作品のヒーローについての基礎知識がないと
各キャラクターの特殊能力やそこから来る役割がわかりづらく、
さらに原作版におけるバットマンのサイドキック「ロビン」の変遷について知らないと
終盤の展開が何の事だかわからない可能性があるので
ロビン周辺の事だけでもwikipediaあたりで予習しておくとよろしいかと思われます。



ここで「ロビンのどの項目を覚えておけばよいのか」を言うと
それがそのままネタバレになってしまうのがもどかしいところでありますが。